第52章 恋敵
「沢山どうもありがとう。」
泰葉と杏寿郎の手には沢山の野菜や果物。
『また遊びに来なよぉ!』
お爺さんと浩介に手を振り、今度こそ智幸達の家へと戻る。
「遅くなっちゃったわね。でも、こんなに沢山貰っちゃった!」
鼻歌を歌いながら楽しそうに歩く泰葉。
今日は泰葉にとって杏寿郎に正式に求婚されたし、会いたかったお爺さんと浩介にも会うことができ、とても良い日だった。
その傍ら、杏寿郎は上手く笑えず、何ともいえぬ心境で歩いている。
杏「…泰葉さん、浩介殿とはいつから親しいんだ?」
杏寿郎は聞かずにはいられなかった。
知ったところで、自分の傷を広げるかもしれないのに。
「んー…こうちゃんはね、私の1つ上なんだけどね。
私が今宮家に引き取られた時に、仲良くなったの。」
「佐久間家の皆さんも優しくてね。こうちゃんはお兄ちゃんのような感じかな?」
お兄ちゃんのよう…
その言葉を聞いて杏寿郎は安堵した。
杏(こっそり泰葉さんの気持ちを聞いて…
彼にはあんな事を言っておがながら、俺は卑怯者やもしれん。)
杏寿郎は、はぁ…とため息をついた。
(杏寿郎さんがため息をつくなんて。やっぱりこうちゃんと何かあったんだわ…。)
泰葉は杏寿郎が心配だった。
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「ただいまー。」
千「お帰りなさい!遅かったですね!」
出迎えてくれたのは千寿郎。
ここは泰葉の実家のはずなのに、千寿郎に迎えられて不思議な感覚だ。
「煉獄家にいるみたい。」
ふふっと笑うと、「本当ですね!」と千寿郎も笑った。
しゅんとしている杏寿郎に千寿郎は気づく。
杏「…ただいま。」
そう言って、部屋に入って行ってしまった杏寿郎。
千「兄上、何かありましたか?」
「実は、私の幼なじみ的な人に会ってね。
彼と何かを話してたんだけど、それからこうなのよ。」
千「…以前にもこのような事ありましたね?」
「以前…?」
泰葉は記憶を遡る。
そして、思い出した。
「宇髄様の家での歓迎会の後!」
千「はい。あの時も兄上はああでした。」
…あの時は…確か
「やきもち?」
千「おそらく。」