第51章 誓い
しばらくして、家に戻ろうとする一行。
しかし、泰葉の足はまだ動けなかった。
「私、もう少しだけ…ここにいたい。」
実の両親の眠る場所。
それを知り、もう少しここで感じたいと思った。
杏「私も共に残ります。夕暮れ前には戻るようにしますので。」
智幸と花枝は頷いた。
花「分かったわ。気をつけて戻ってくるのよ。」
柔らかく微笑んで、皆はきた道を戻って行った。
「…私ね、ずっとお墓はどこなんだろうって思ってたの。」
「報告したいことが沢山あってね。一度は行きたいなって。」
杏寿郎は泰葉の肩を抱く。
その手は優しく包んでくれるようだった。
「お父さん、お母さん、私…こんなに素敵な人と巡り会えたのよ。」
そう言って桜に笑ってみせる泰葉に、杏寿郎の胸はギュッとなった。
この感じは久しぶりだ。
泰葉に恋心を抱いたあの時、同じような胸の締め付けを感じた。
(あぁ、俺は泰葉さんにまた恋をしたのか…。)
杏寿郎は泰葉の肩を掴み、桜ではなく自分の方へと向かせた。
「?」
杏「泰葉さん、俺はまだ君に重要なことを言っていない。」
「重要?」
杏「これは智幸殿から許しをもらってからにしようと決めていた。」
杏寿郎は、突然片膝をつき泰葉の両手を取る。
泰葉は急にどうしたのかと慌てるが、真剣な表情の杏寿郎を見て静かに言葉を待った。
杏「泰葉さん、俺…煉獄杏寿郎は貴女を一生愛し、幸せにする。」
「俺と…夫婦になってくれ。」