第51章 誓い
「この桜はね、一年中咲いているのよ。」
智「品種はよくあるヤマザクラだ。
この場所が…特別だからね。」
杏「ここが…特別?」
杏寿郎の問いかけに智幸は頷く。
なぜ特別なのか、智幸と花枝以外…泰葉さえ理由を知らない。
智「泰葉にも初めて話すね。」
少し目を細めて桜を見る智幸。
智「ここはね、西ノ宮家の墓なのです。」
智幸の言葉に皆目を見開いた。
槇「ここが…墓?」
「それに、ここにこの桜があるとすればここは…」
槇寿郎の声に、智幸は頷く。
智「西ノ宮家は特殊な力を持っているため、墓石に名の彫られた墓は持ちませんでした。荒らされたら大変ですからね。そして、この一帯は西ノ宮一族が住んでいた場所です。」
智幸の話によると、
人間、鬼に力を奪われないように
西ノ宮家の人間が亡くなった際には
遺体を置かず、すぐに火葬をした。
そして、遺灰をこの桜の咲く地に撒き、土に還る。
西ノ宮家の話があまり知られていないのはその為だった。
智「初めの頃は、こんなに多くなかったのです。
しかし、鬼舞辻に滅ぼされた後、このようにより多くの花をつけました。」
泰葉はまさかここが自分の一族の土地だとは思わなかった。
記憶をなくし、笑顔を忘れた自分が、初めて笑った場所。
自分の実の両親が眠る場所…。
花「泰葉は記憶をなくしていたから、思い出すまでは話さないでいたの。
記憶が戻ったらここにきて話そうと。」
智「それに、泰葉が素敵な人を連れてきたら、ここに連れてこようと思っていたんだ。
それも叶って良かったよ。」
花枝は泰葉の背に手を添えた。
智幸は杏寿郎の背に。
そして、一列に並び一同手を合わせる。
(お父さん、お母さん会いたかったよ。
貴方達を襲った鬼はこの世からいなくなりました。)