第6章 再会
だんだんと、身体が楽になっていくのを感じる、
そして槇寿郎は実感した。
この娘は、やはりあの一族の者なのだと。
槇「泰葉さん…と言ったか。
その…ありがとう。
第三者に話すような事ではなかったのだが、
今は君に聞いてもらって、よかったと思っている。
恥ずかしながら、息子たちと向き合う決意ができた。
礼を言う。」
槇寿郎は頭を下げる。
泰葉は、首を振った。
襖の外で、もう一人
静かに涙を流す人物。
杏寿郎だ。
盗み聞きなどするつもりは無かったのだが、泰葉の事が心配だった。
父を信用していないわけではないが、万が一、ひどい言葉や殴られでもしたら…と思って、気づかれないように待機していたのだ。
しかし、父の本音を聞いてしまった。
嬉しかったのと同時に、そんな風に思わせていたのかと悲しくもなった。
その時、千寿郎の部屋から音がしたので、杏寿郎はその場を去った。
「初対面にして、頬を叩いたり、大口を叩きました。」
槇「いや、あのくらいされた方が良かった!
なんなら拳でも良かったくらいだ!」
…とは言った者の、平手でも十分痛かった。
流石、優れた戦闘能力を持つ者。
拳だったらと、冷や汗をかいた。
泰葉は幾分明るくなった
槇寿郎の声色に安心することができた。
槇寿郎は泰葉の顔を、
柔らかい表情で見た。
槇「君は、記憶を失っているようだな?」
「はい…」
槇「自分の記憶は、自分しか開けない。
だから、無理に開こうともしない。」
その言葉をきいて、槇寿郎も何かを知っているのだと分かった。
槇「覚えていないまま、聞いてほしい。
初対面と言ったが、実は君とは会った事がある。」
泰葉は目を見開いた。
槇「思い出したら、また色々と昔話を話そう。」
少しニコッとする槇寿郎。
その笑顔に安心して、泰葉もニコッと笑った。
「はい、その時はまた色々と聞かせてくださいね。」
槇寿郎はほのかに頬を染める。
槇(この年で、女子の笑顔に頬を染めるとは…不甲斐なし!)