第51章 誓い
杏「…しかし、智幸殿も雷の呼吸を?」
(あ、やっぱり気付いてたんだ。)
さすが鬼殺隊の柱。
杏寿郎は智幸と対峙し、構えをとった時から気付いていた。
智幸は呼吸までは使えないが、そこに近いものは習得していると。
智「あぁ。昔ね。3ヶ月しか教わっていないのだけど。
今宮家は剣技で西ノ宮家に手を貸していた。
護衛…と呼ぶべきか。
それで、稽古をつけてもらう時、その人が元鬼殺隊員でね。
雷の呼吸の使い手だったんだ。」
「でも、なぜ3ヶ月だけ?」
智「持病があってね。それが原因で突然亡くなってしまったんだ。」
少し寂しそうな表情を見せた智幸。
そのまま稽古を続けていたら、父も雷の呼吸の使い手になっていたのだろうか。
智「でも、この稽古のおかげで居合を極めることができた。
久しぶりに杏寿郎くんのように強い人と手合わせできて楽しかったよ!」
智幸は一呼吸ついて、杏寿郎に歩み寄る。
智「この日のためにまた頑張ってくれたんだね。
ありがとう。
約束だ。杏寿郎くんと、泰葉の結婚を認めよう。
私たちの大切な娘だ。よろしく頼むよ。」
そう言って智幸は右手を杏寿郎に差し出す。
杏寿郎も右手を出し、2人はがっちりと握手した。
杏「もちろんです!この命に変えても泰葉さんを守り、
幸せにするとお約束します!!」
花「うふふ。よろしくね。
こんな美丈夫な義息子ができて、嬉しいわ。」
そう杏寿郎に微笑み
花枝は濡れた手拭いを智幸に渡す。
その目は智幸に惚れ直したと言わんばかり。
泰葉は両親のそんな姿を見て、照れ臭くなった。
「…はい、杏寿郎さん。」
泰葉も杏寿郎に濡れた手拭いを渡す。
もちろん、父の姿にも感動したが、杏寿郎にも惚れ直したのは事実。
杏「俺もあのような目で見てもらえるだろうか。」
いたずらに笑う杏寿郎。
あの戦いの眼差しの後にその笑顔は狡いと思う。
「…もちろん。素敵でしたよ。」
今は許しをもらえて嬉しい一時。
少しくらい惚気てもバチは当たらないだろう。
杏「…!そ、そうか…。それは嬉しいな!!」
まさか泰葉からそう返ってくるとは思わず、照れ隠しでははは!と大声で笑う杏寿郎。
『ぷっ…』
その分かりやすさに皆で笑った。