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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第50章 列車の旅



今日は皆、袴を履いて正装だ。
杏寿郎は飴色の着物に紺の袴。
今日もとても美丈夫だ。

泰葉は勿忘草色に菖蒲柄の着物。
杏寿郎が贈った着物。

千寿郎はしゅっしゅっと煙を吐きながら走る列車に興奮がおさまらない様子。
ずっと窓の外を見て移り行く景色に釘付けだった。
杏寿郎もこうして出かけることなど久しぶりだからか。
千寿郎に、向こうに見えるものはなんだ、あれはこうして作られたものだぞ、と楽しげである。

どれだけこの兄弟が精神的に強くとも、大人びていようとも、やはり列車に乗れば少年に戻っていた。


流石に槇寿郎は…


おっと。こちらもソワソワしている。


「ふふっ。」

泰葉は思わず吹き出した。

「槇寿郎様、ご一緒に混ざられたらどうですか?」

杏寿郎達に気づかれないように小声で促す。

槇「ば、ばかを言え。この歳でそんなことできるわけないだろう。」

「年齢など関係ありませんよ。
楽しいこと、嬉しいことは何でも共有した方が良いと思いますよ。
瑠火様との記憶、良いものなのでしょう?」


優しく微笑む泰葉に、槇寿郎は敵わんと一つ息を吐いた。


槇「泰葉さんは心を読むのが本当に上手いな。
心理戦となれば勝てる気がしない。」

「では、槇寿郎様に勝負を挑むときはそのようにしますね。」

槇「ふ、勝ち戦だな?君も随分とずるいことを言うようになったな。」

「それは…申し訳ありません。」

槇「いやなに、そんなものは可愛いものだ。
そのくらいになってくれた方が、こちらも打ち解けてもらえたようで嬉しい。」


思わず溢れた槇寿郎の本音。
それに泰葉は胸がじんと暖かくなる。


槇「泰葉さん、以前に君と会ったのは初めてではないと…話したことがあるのを覚えているか?」

「はい。槇寿郎様のお部屋で…ですよね?」

槇「本当は記憶が戻った時に話してあげればよかったのだが…、すっかり時を逃してしまっていた。」

「今、お聞きしても?」

杏寿郎と千寿郎も、槇寿郎の話に耳を傾け、落ち着いて座り直した。
それを見て槇寿郎は頷き、話し始める。


槇「まだ瑠火が生きている時…最後に列車に乗ったのはそれが最後だ。」


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