第48章 おかえり
杏「あぁ、いい匂いだと思ったらきんぴらを作ってくれたんだな!」
目を輝かせている杏寿郎。
「ふふ。残念ですが、これは明日の朝ですよ。
今日は鰻なので濃い味同士喧嘩してしまいます。」
その言葉にあからさまにショックを受けている杏寿郎。
杏「いや!俺はどちらも美味しく食べられる!」
「そういう問題じゃありません。
…もう、じゃぁ口を開けてください。」
言われるまま口を開く杏寿郎。
そこに泰葉が少しのきんぴらをヒョイと菜箸で入れてやった。
もぐもぐと咀嚼し、飲み込むと満面の笑みを見せる杏寿郎。
杏「うまい!!やはり、泰葉さんの作るものは美味いな!」
「ありがとうございます。」
泰葉も微笑むと「コホン。」と一つ咳が聞こえた。
花「仲がよろしいのは結構だけど、まだ気が早すぎないかしら?」
千「そ、そうですよ!僕たちがいるのを忘れないでください!」
ニヤニヤして揶揄う花枝と、顔を真っ赤にしている千寿郎を見て、自分たちの状況を把握する泰葉と杏寿郎。
一気に恥ずかしくなり、『すみません』と杏寿郎は居間へ。
泰葉は器にきんぴらを移した。
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賑やかな食事…というより宴に近い。
食事も進み、大人達の酒も進む。
千寿郎と、泰葉は酒のおかわりや、つまみを下げたり足したりと忙しかった。
槇「いや!念願の鬼を滅することができたんだ!
それを息子達が叶えてくれた!こんなに嬉しいことはない!
父のように投げ出さず、立派に成してくれたのは本当に誇りだ!」
槇寿郎は柄にもなく、泣きながら杏寿郎を褒めている。
この記憶が明日以降に残っていようが無かろうが、1日くらいこのような日があっても良いだろう。
杏「父上、あなたの息子だから心の炎が消えなかったんですよ。」
静かに、諭すように杏寿郎が槇寿郎に感謝を込めて酌をする。
それに槇寿郎はまた泣いた。
智「本当に、おめでとう。そしてありがとう。」
花「その…ずっと気になっていたのだけど…。
2人の髪の毛は…どうしたの?」
花枝らしい突然の質問。
泰葉はクスッと笑って何があったかを話す。
すると、泰葉の為に杏寿郎まで髪を切ったなんて素敵!
と目を輝かせていた。