第48章 おかえり
泰葉がチラリと杏寿郎を見ると、
杏寿郎は変わらず智幸を見つめていた。
杏「智幸さんのお気持ち、しかと受け止めました。
ご期待に添えられるよう、また精進したいと思います!」
杏寿郎の瞳には、炎が燃え上がるような光が宿る。
愛娘を嫁に出すのを許すか…父の決意。
宣戦布告と言わざるを得ないこの状況に、気持ちを無碍になどできるわけがない。
ならばその勝負、絶対に勝ちに行く。
杏寿郎は燃えていた。
千「兄上…完全に燃えてますね…。」
千寿郎の言葉に泰葉も頷いた。
智幸と杏寿郎の手合わせは来月末と決まった。
その時は槇寿郎や千寿郎も連れて、東北の地に向かう。
それを知った千寿郎はとても喜んでいた。
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泰葉は千寿郎、花枝と台所に立つ。
疲れているだろうから座っててくれと言われたが、だからこそ台所に立ちたかった。
今日はお祝いだと槇寿郎が鰻重を買ってきてくれた。
なので、簡単な付け合わせと、お吸い物しか作らないが。
千「僕、東北に行くのは初めてなのです!
列車にも乗れるんですよね?楽しみだなー!」
花「でも、こちらと違って何も無いわよ?
のどかでいい所だけどね。」
「まだ佐久間家のお爺さまは元気?
そのお爺さまの作る野菜や果物は本当に美味しいのよ!」
楽しげに話しながら作る食事。
鴉が任務を伝えにくることもない。
こんなに落ち着いた気持ち、いつぶりだろうか。
煉獄家にとっては初めてなのではないか…。
泰葉は千寿郎と花枝が吸い物を作っている間に、明日から食べるおかずの下拵えをする。
久しぶりにさつまいものきんぴらを作ろう。
季節的にはさつまいもではないが、杏寿郎が好きなだけあって
倉庫の暗所にさつまいもが沢山眠っているのだ。
香ばしいにおいが立ち込め、千寿郎と花枝にも味見してもらった。
花「美味しい!さつまいものきんぴら…これもアリね。
その発想はなかったわ。家でも作ってみるわね。」
泰葉が母に褒められ、微笑んでいると着流しになった杏寿郎が現れる。
後ろ髪がなくなり、少し雰囲気が違うがやはり男前だ。
いや、むしろ…いつも見えない項が見えて…なんとなく恥ずかしい。
花「あらー…、やっぱりいい男。」
「ちょ、お母さん!」
デジャブ。