第48章 おかえり
槇寿郎と智幸はそのまま眠ってしまった。
冬でもないし、かぜも引かないだろうと薄手の布団をかけてやり
みな自分の部屋へと戻る。
花枝は湯浴みをしに行き、千寿郎は自室に布団の用意をする。
杏寿郎は自室の前まで行くが、そわそわとしている。
「…どうしました?」
なんとなく、この先のことが分かっていたが、あえて聞いた。
その方が杏寿郎も心が楽だろうと。
杏「…離れで…寝ても良いか?」
酒のせいか。照れているのだろうか。
杏寿郎の頬が赤い。
いつもは快活明朗な杏寿郎がこんなにも控えめに尋ねてくる。
そんな姿が愛しくて堪らなかった。
「…もちろん。元よりそのつもりでしたよ?」
泰葉がそう言うと、パッと明るい顔になる。
杏「本当か?では、行こう!!」
杏寿郎が手を引いて離れへと導く。
少し急足になりつつ、そんな彼の後ろ姿を見て泰葉は微笑んだ。
離れの鍵を開けて中に入る。
今では自分の部屋になったこの離れも、落ち着く空間だ。
しん…とした中に壁掛け時計のチクタク…と言う音が響いている。