第48章 おかえり
智「お館様が私たちの緊張を解いてくれようとしてね。
泰葉のことを聞いてくれたんだよ。
いい娘さんだって。」
花「お話できる鴉がきて貴女達の報告をしてくれる度にヒヤヒヤしたのよ。」
泰葉の両親は無惨と戦っている間のことを話してくれた。
幸いにも、お館様のところには鬼も出ず、静かな時が流れていたらしい。
しかし、その静かさが不安を煽るのも事実。
鴉が来る度肝が冷えたという。
「あ…だからお館様、両親のこと言ってたんだ…」
杏「そうだな。素晴らしいご両親あって、泰葉さんがいると言っていた。育ての…というところもあるだろうが。
産みのご両親も、育てのご両親も優しく素晴らしい人だ。
俺もそう思う。」
花「ま、杏寿郎さんったら!恥ずかしいわ!」
杏寿郎に褒められたと舞い上がる花枝。
それを少し困ったように笑いながら、智幸が杏寿郎に向き直る。
智「ところで。杏寿郎くん。
…私に何か近々言いたいことがあるんじゃないかな?」
杏寿郎が智幸に言いたいこと…。
泰葉が頭に?を浮かべていると
杏寿郎はまっすぐ智幸を見る。
杏「はい!今日では忙しない中なので、日を改めてお時間をいただきたいと思います!」
その様子に、泰葉も何の話かピンときた。
流石に千寿郎も。
2人はぽぽぽと頬を染め、杏寿郎と智幸を往復して見る。
智「うん。待っているよ。
しかし、杏寿郎くんの話には二つ返事では頷けない。
僕と一戦を交えてもらおう。」
『……え?』
泰葉と杏寿郎は声を揃えた。
聞き間違えたろうか。
杏寿郎と智幸が一戦を交える?
「お父さん!杏寿郎さんはつい先日まで柱としていた剣士なのよ?」
そんな無茶な…と言いたかったところを花枝が制止する。
花「お父さんね、ずっと密かに鍛錬していたのよ。
かわいい一人娘を易々と渡せないってね。」
…確かに、以前よりも引き締まっている気がする。
智「最初はどんな相手でも、負かしてやろうと鍛錬はしていたんだ。
しかし、相手がどうも炎柱の杏寿郎くんになると知って、こうしちゃおれんと頑張ってるんだよ!」
そう言って笑う智幸。
まさか、杏寿郎と父が戦う時が来るとは…。
泰葉は頭を抱えた。