第6章 再会
泰葉の反応に、杏寿郎はもちろん
槇寿郎も驚いた。
今まで親戚のものや、煉獄家を気遣う人たちは
揃って槇寿郎を立ち直らせようと、話にやってきた。
しかし、この態度。
凄まじい威圧感に尻込み、誰も説得できなかった。
息子たちでさえ、同じだった。
千寿郎は怯えてしまい、
杏寿郎は怯んだりはしないが、聞く耳を持ってもらえない。
それなのに泰葉は、槇寿郎を睨みつけ
槇寿郎にも有無を言わさず話そうとしている。
これには槇寿郎も負け、「入りなさい」と、自室へ促した。
その迫力に杏寿郎は何も言えなかったが、内心とても心配だった。
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泰葉は槇寿郎の自室へ入る。
そこはとてもじゃないが、人を招き入れる部屋ではなかった。
広い部屋の真ん中には布団が敷きっぱなし。
周りには沢山の酒瓶が転がっている。
改めて泰葉は、あの2人の父なのだろうかと疑った。
ズカズカと部屋の奥へ進む槇寿郎。
そこには縁側があった。
窓を全て開け放ち、空気の入れ替えをする。
どうやら、酒の匂いが充満している自覚はあるらしい。
そして、槇寿郎は縁側に腰掛ける。
杏寿郎のはガッチリして逞しい、頼れる背中。
千寿郎は筋肉もあるにはあるが柔らかく、優しい背中。
そして槇寿郎はというと、
沢山のことを背負いすぎた背中。
泰葉は率直に、そう感じた。
槇寿郎がこちらに、と自分の隣に座布団を置いた。
その辺の気遣いができるのは、やはり彼らの親だと思う。
槇「なぜ、名前を一番に名乗らなかった?」
まず、第一声は槇寿郎だった。
「名乗る必要がないと思いました。あくまで、街で助けられただけで、このお宅にはもう来ることもないだろうと…。
それに…もし、私の名前が違ったら…どうしていましたか?」
槇「別に…どうにもせん。」
「あと、千寿郎さんに熱があると言った時、やはり…と、おっしゃいましたよね?
体調が悪いことを知っていたのですか?」
槇「朝飯の味がいつもと違っていたからな。
全く、愚息が。体の管理も…」
「あの。」
泰葉は槇寿郎の言葉を遮って、体を槇寿郎の方に向けた。
急な行動に泰葉の方を見る槇寿郎
パシンッ