第47章 効果の程は…
泰葉はしのぶの手により採血された。
あまねが小さな盃を8つ用意する。
そこに異様ではあるが、採血した血を少量ずつ注ぎ入れた。
杏「では、いただこう!」
杏寿郎の合図でクイっと盃を傾ける柱達。
泰葉の血が身体に入れると、強い酒を飲んだかのようにカッと熱くなった。
実「身体は熱くなったが…流石に分からねぇなァ。」
行「寿命が来るとすれば私が先。
私で皆実感したらいい。」
そう話す柱達の中で、一人なかなか盃を傾けられない人物がいた。
小芭内だ。
その理由は彼の生い立ちにある。
小芭内の一族は蛇鬼を崇めていた。
その蛇鬼が殺した人の金品で私腹を肥やす。
その代わりに蛇鬼の好物である赤ん坊を差し出して。
小芭内も本来なら生贄であったが、稀少な男で目の色も左右違う。
なので、もっと大きく食べるところが増えたから…と待ったがかかっていたのだ。
蛇鬼は小芭内の口を自分とお揃いにさせると言って、口を裂き、その血を盃に注ぎ飲んでいた。
小芭内は盗んだ簪で必死に木の格子を削り逃げ出した。
その後を追われたが、当時の炎柱であった煉獄槇寿朗に助けられ、今に至る。
盃に入った血を見て冷や汗が流れる。
小「………。」
杏「小芭内、それを貸してくれ。」
杏寿郎が小芭内から盃を取り上げる。
そして、コップに入った水にチョロ…と注いだ。
透明な水は淡く透き通った赤になる。
杏「柘榴の入った水だと思って飲むといい!
彼女の血は、血の味がしないぞ!!」
ニカッと笑う杏寿郎。
杏寿郎は小芭内の生い立ちを知っていた。
冷や汗を流した彼を見て杏寿郎は、もしやと耀哉に頼みコップと水を用意してもらったのだ。
小「あ、あぁ。感謝する。
しかし、俺は…」
穢れた血の一族だ。
早く死んでこの肉体、血を入れ替えたい。
そうでなければ、幸せに生きることなど、ましてや蜜璃に触れることなどできないと思っている。
その時、小芭内の手を蜜璃がそっと握った。
蜜「伊黒さん、伊黒さんがどんな私でもいいと思ってくれたように、私もどんな伊黒さんでもいいのよ。
過去に何があろうと、こうして優しい伊黒さんに逢えたことに感謝しているの。
来世の約束をしたけれど、やっぱり今の時代でも少しでも長くいたいわ。」
小「…甘露寺。」