第45章 喰らえ
『うっ…ゲホッ…』
無惨が咳き込み、吐血する。
やはり、あれだけの毛束を喰らえば壊死効果が格段と上がっている。
泰葉の髪の毛、最小限で薬を作った珠世。
それには女性ならではの気遣いだった。
「もっと使っても構わない」と、泰葉は言ったが珠世は首を振った。
「髪は女性の命です。その髪が伸びた分、沢山の思い出がおありでしょう?鬼のために、それを投げ捨てる必要はありません。」
し「そうですよ。煉獄さんもその髪が好きでしょう?素敵な髪飾りを贈るほどに。」
愈史郎は刈り上げてしまえと言っていたが…
…ごめんなさい、珠世さん、しのぶさん。
私、どうしても無惨を今夜倒したい。
泰葉は落ちた髪飾りを拾い、握った。
無惨は焦りを感じていた。
このままでは無様に死んでしまう。
そんなのは御免だ。
苦し紛れに管を泰葉達に向かって打ち付ける。
「夜明ケマデ、40分!!!」
鴉の声を聞いて、ドンッと衝撃を放つ。
そして、その隙に日の当たらない場所へと無惨は走り出した。
「なっ!逃げた…!!」
杏「追うぞ!!!」
泰葉達は追いかけた。
しかし、そこで不自由を極めていたのは小芭内。
片目が弱視でほとんど見えなかったと言うが、今は両目。
治癒してやりたいがそんな余裕もない。
炭「伊黒さん!!これを!!鏑丸と視覚を共有してください!!」
炭治郎は愈史郎の術の紙を渡す。それを鏑丸と自分の目に貼れば、人間とは同じと言えないものの、視界が開け戦いやすくなった。
小「感謝する。炭治郎。」
小「奴を挟み込むぞ!!」
小芭内と、炭治郎が回り込み、攻撃を仕掛ける。
『私の行手を…阻むなぁぁ!!』
ビュンと無惨の管が小芭内と炭治郎を弾き飛ばす。
——炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄!!——
ドォオオンッという衝撃と共に、大きな炎が辺りを抉りながら猛威を奮う。
「杏寿郎さんっ!!!!」
前のようになったらどうしよう…。
不吉な想いが巡った。
砂埃が落ち着くと、そこには杏寿郎が無惨と距離を取って立っていた。
どうやら無事のようだ。