第45章 喰らえ
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決戦前、杏寿郎と泰葉が離れの縁側に座り、月を眺めていた時。
杏「髪、伸びたな。」
泰葉の髪はいつのまにか胸あたりまで伸びていた。
泰葉は珠世から、細胞に壊死させる力があると聞いた。
もちろん、この髪一本にも。
もし、この先の戦いで劣勢だったら。
大切な人が死んでしまいそうになったら…
泰葉はこの力を活かして欲しいと思った。
それで鬼のいる世界が終わるのならと。
「杏寿郎さん、お願いがあります。」
杏「ん?なんだ?」
「私の細胞には壊死させる力があるそうなの。髪の毛一本まで。
鬼舞辻に、私が西ノ宮家の生き残りだと伝えれば、おそらく私を喰らうでしょう。
そして、西ノ宮の噂話は正しく伝わっていることが少ない。
きっと、一滴の血を余すことなく、肉まで喰らいたくなるはず。」
杏「ま、待て。それは…君が…」
「最後まで聞いて。髪の毛一本までにもその力がある。なるべく一つに束ねた髪を掴ませるようにするから、杏寿郎さんにそこを断ち切ってもらいたいの。そうすれば髪の毛だけでもと喰らうはず。
この毛束分、喰らわせることができれば大きく壊死を早められるはず。もし、掴みどころが悪ければそのまま斬ってもらって構わない。そのまま喰らい、無惨は死ぬ。」
杏寿郎は眉間に皺を寄せ、難しい顔をした。
杏「…それは聞けない。」
「お願い。それは最終手段。」
杏「そうならないように、俺が守る。」
それが、2人だけの作戦だった。
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