第45章 喰らえ
炭治郎は技を出し続けているので酸欠を起こしてしまっていた。
「炭治郎くん!しっかり!!」
足に力が入らずガクンとなる炭治郎を守ろうと身を呈す。
その隙をついて無惨の攻撃が向かってくる。
(このままじゃ、炭治郎くんとやられてしまうっ!!)
しかし、炭治郎を死なせるわけにはいかない…
泰葉は命を覚悟した。
「蜿蜿長蛇!!!」
ドンッと攻撃から身を弾かれ、道に転がり込む。
炭治郎は…!とみると、小芭内が炭治郎を抱えて救い出していた。
「伊黒様!!」
泰葉が小芭内を見ると、その両目には大きな引っ掻き傷のようなものがあった。
あれでは見えていないのでは…。
泰葉は決心する。
皆、命があってもボロボロだ。
珠世が、壊死効果の薬を打ち込んでいるはずだが、まだ大きな効果が出ていない。
それならば…いっそ…
「ごめんなさい、杏寿郎さん。」
大好きな人をこれ以上死なせたくはない。
泰葉は無惨の前に躍り出た。
「鬼舞辻無惨!お前の相手はここだ!」
『何?』
無惨は老化のせいで段々と動きが鈍っている。
だが、誰1人仕留められず、尚且つ鬼殺隊でもない女さえ殺せずにいるのに腹立てていた。
まずはこの女1人でも殺してやる。
そして、喰って力の一部にしてやると思っていた。
『小賢しい小娘め…。お前、東條家の生き残りだな。』
東條…それは西ノ宮家が身を隠すのに使っていた苗字。
泰葉はゆっくりと立ち上がり、無惨を睨みつける。
瞳の黄色く強い光に無惨は柄にもなく身震いした。
「私は西ノ宮泰葉。
お前の言う、東條家の生き残りだ。
しかし、東條という名は身代わり。本当の名は西ノ宮という。」
無惨は珠世よりも永く生きている。
もちろん西ノ宮家の噂も耳にしていた。
無惨の口角が今まで以上に上がる。
凝慘から西ノ宮と聞いたが、ピンと来なかった。
『は。はははっ!!お前があの西ノ宮家だったのか!!
西ノ宮の高い戦闘能力、そしてその血肉は不老不死の力があると言う!!!
お前を喰らえば、私は更に強くなる。
その髪の毛一本残らず、喰らい尽くしてくれよう。』
「そんなに食いたいか。ならば捕まえてみろ。」