第6章 再会
「あの少……え、えっと…」
少年と呼ぶことを躊躇した。
泰葉にとっては、どこぞの少年だが、目の前の彼にとっては弟である。
それに、恩人でもある。
しかし、まだ名前も知らなかった。
杏寿郎はその意味を読み取った。
杏「あぁ、まだ名前も名乗っていなかったな!
俺は、煉獄杏寿郎!
そして、弟の千寿郎だ!」
溌剌な自己紹介だ。
あの売店の時を思い出す。
「私は泰葉。
西ノ宮泰葉です。」
三つ指をつき、頭を下げた。
その所作も、柔らかく
杏寿郎は見惚れてしまう。
(女性とは、こんなに柔らかなものなのだろうか)
もちろん、所作のことである。
杏寿郎は特に女性が嫌いとか、
男性の方が好きとか
そういう類ではなく、
ただただ、興味がなかった。
恋愛ごと
女性に言い寄られる事は多いが、
なんせその気にもならない。
自分を、色目で見てくる…
その眼差しに鳥肌が立った。
毎日、強くなるために鍛錬をする。
人々の命を守るため、
鬼を滅する。
母との約束を果たすため…
それだけが生きていく理由だった。
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杏「泰葉さん、団子は好きか?」
杏寿郎は、土産に買ってきた
みたらし団子を持ってきた。
「はい。
…でも、お土産にされていたのでは?」
杏「沢山買いすぎてしまった!
こんなに沢山は父と、千寿郎も食べきれない。
だから、泰葉さんも食べてくれ!」
そう言って、皿に2本ほど取り分けて
泰葉の前にコトンと置いた。
泰葉は杏寿郎の言葉を頭で繰り返す。
(父と、千寿郎…お母様はいらっしゃらないのね…)
泰葉の分と取り分けられた団子に、杏寿郎の配慮が見られて、男性なのにしっかりしてるな…と感心した。
そして、2人は団子を頬張った。
もちもちとした団子に
しっかり目についた焦げ目が香ばしい。
とろりとした、みたらしが絡まって、
とても美味しかった。
「ふふっ、美味しい。」
泰葉は無意識に感想を言い、幸せそうに頬に手を添え微笑む。
そして痛いくらいの視線を感じた。