第44章 命あってこそ
無惨は泰葉を狙って9本の管を打ちつける。
それを全て躱し、あっという間に背後に回り込んだ。
泰葉は無惨の管の付け根にあたる、背中の中心に強烈な蹴りをいれた。
ドンッ!!!
『ぐはっ…』
無惨はあまりの衝撃に目を見開くが、身体中にある口から強い吸息をする。
「ぐっ…」
なんて強い吸息…!!
このままではすぐに喰われる…!!
ジリジリと無惨に寄っていってしまう。
「気炎万象!!!」
その時、無惨の腕を斬り落としたのは杏寿郎。
続けに小芭内、実弥も攻撃を繰り出す。
腕が斬れたことにより、泰葉の身体は解放された。
しかし、無惨の中で思い出されたことがあった。
それは泰葉の瞳の黄色い光。
あれには見覚えがある…。
『あの娘…まさか!!』
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その頃、無一郎は先程の上弦の壱との戦いの内に起こった、刀の変化を思い出していた。
上弦の壱に突き刺した刀に強い握力を与えた時、刀身が赫く染まり、威力を発揮することができた。
あの赫刀をまた出すことができれば、効果が変わるのではないか…。
無一郎はググッと手に力を込める。顔に出た痣は更に濃く浮かび、これまでにない程の握力を込める。
すると、無一郎の白刀はまた赫く、染まっていく。
——霞の呼吸 弐ノ型 八重霞——
大きく身体を捻り、幾重にも重なる斬撃を様々な角度から飛ばす。
その攻撃は無惨の腕や管に当たり、その断面からの再生を鈍らせた。
やはり!
赫刀の攻撃による再生は少し遅らせることができる…!!
その変化に気づいたのは小芭内。
小芭内もまだ自分は戦果を上げられていないと、自分にできる事を探していた。
無一郎の赫刀が、刀に関係なく刀身の色を赫く染めることができると証明している。
そして、あの威力。
無一郎が今できることは強く握りしめるのみ。
強い衝撃を受け、刀の温度が上がったのではないだろうか。
刃を赫く染めるのは、死の淵に己を追い詰めてこそ発揮される
万力の握力