第44章 命あってこそ
玄弥の回復もあと右腕だけとなった。
もう少し、もう少し。
しかし、ゴゴゴゴッとまた地面が揺れる。
どうやら建物が崩壊しているようだ。
ここもいつまでもつか…。
そう思っていると、ぐんっと下から突き上げられるような衝撃を感じる。
「何⁉︎」
これは、まさか…
地上に出されようとしているのか?
しかしこれでは天井に押しつぶされてしまう。
「…玄弥くん、無一郎くん!」
どうしよう、右腕は使えないし、男2人を片手で抱えられるのか?
アタフタしているとふわっと身体が浮いた。
え…
泰葉が何が起きたのかと見ると、玄弥が泰葉を抱えていた。
そして、隣には無一郎の姿もあった。
「玄弥くん、無一郎くんっ!」
良かった、目を覚まして…
玄弥の右手はまだ再生途中だったが、動くのには支障ない。
——霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫——
迫り来る天井を最も簡単に無一郎が斬り刻む。
泰葉に降りかかりそうな壁や破片は玄弥が弾き飛ばしてくれた。
おかげで泰葉などこも傷めることなく、地上へとたどり着いた。
しかし、辺りを見ると震災があったのかと思うほどの惨状。
どうやら泰葉達のいた部屋は最後の方に地上に出されたようだ。
遠くで無惨と戦っているのだろう、激しい砂煙と閃光が飛び交う。
その中に勇ましい炎も見えたので、杏寿郎も生きていることが確認できた。
安堵するのも束の間。
すぐに加勢しなくてはならない。
泰葉は己を治癒できないので、飴を舐めても無意味。
一番ボロボロになっていた。
無「泰葉、俺たちがあの近くまで連れて行く。
煉獄さんに向かってもらうようにするから、それまでは頑張って。」
「分かった。ありがとう。」
3人は戦いの場へと急いだ。