第44章 命あってこそ
しかし、泰葉は諦めたくなかった。
「伊之助くん、ちょっとごめん。」
伊「お、おう。」
泰葉は伊之助に降ろしてもらい
その時、剥き出しになっている伊之助の刀身に腕を掠めさせた。
シュッと掠めた腕からは真っ赤な血が流れ出す。
伊「っ、おい!何してんだ!!」
「玄弥くん、これ飲んで。」
し「泰葉さん…万が一玄弥くんに鬼化が残っていたら…」
腕を噛みちぎられてしまうかもしれない。
そしたら玄弥も死んでしまう。
「玄弥くん、私の腕は毒なの。
だから絶対食べてはダメ。血だけ、血だけを飲んで。」
玄「……。」
玄弥はゆっくりと滴る泰葉の血を口にする。
しかし、まだ少し鬼化が残っていたようで、飢餓状態のように身体をばたつかせた。
玄「ぐぁぁ!ぐぅ、うああ!!」
「玄弥くん、頑張って。」
するとその時、実弥が目を覚ます。
実「!!!!玄弥!!なんでお前…!!」
玄「ぐおぉ!!うぅ…うぅぅ…」
玄弥はもがいていたが、実弥の顔を見るなり目に涙をいっぱい溜めて、呻き声が泣き声に変化していった。
玄「兄ちゃん、ごめん…。あの時、責めたりして。
俺、兄ちゃんが守ってくれたみたいに…俺も、兄ちゃんを守りたかった…。
同じ…気持ちだった。兄弟だから。」
実「お前をこんなにしちまって、守れてねぇだろうがよ!!」
玄「辛い思いをした兄ちゃんは、幸せなってほしい。
死なないでほしい…。
兄ちゃんは世界で、一番優しい人だから。」
そう微笑んで気を失った玄弥。
実「玄弥…」
泰葉は玄弥を仰向けにさせる。
少しずつ無くなった半身が戻りつつある。
もう少しすれば身体は戻るだろう。
無一郎も飴のおかげで大きな怪我も回復できているようだ。
しのぶが脈などを図って無事を確認した。
すると、ゴゴゴゴッと地鳴りがする。
大きく揺れて天井からパラパラと、小石が落ちた。
実「な、なんだァ⁉︎」
し「無惨が動き出したのかもしれません!!」
「皆さん、先に行ってください!私は玄弥くんと無一郎くんを必ず助けて行きますから!」
伊「でもお前!」
「大丈夫、ちゃんと杏寿郎さんのところへ行く。」
実「…玄弥と時透を頼む。」
穏やかに微笑むと、ぐっと拳を握りしめ無惨のいる場所へと皆急いだ。