第43章 仇と執念
しかし、その中でカナヲには見えていた。
(この術…粗い。明らかに精度が落ちてる…)
ガシッ
攻撃にかかろうとした伊之助が菩薩に捕まってしまった。
童磨にとっても苦し紛れの技なのか…
最後の攻防とも言えるだろう。
(私にもアレを使う時が来た!!)
跳び上がったカナヲの蝶の髪飾りが外れ、長い髪がはらりと靡く。
カッと見開いた目は真っ赤に染まっていた。
し「カナヲ…まさか!」
しのぶが叫ぶ。
——花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼——
動体視力を極限まで上げると、周囲の動きは鈍く遅く見える。
眼球への圧力で出血し、強膜は赤く染まる。
カナヲに向かう菩薩の腕を素早い動きで斬り落とし、あっという間に童磨の頸に刀が届いた。
すると、後ろから菩薩が吐息を吹きかける。
ピシピシ…と、固まっていくのは…
カ「泰葉さん!!」
「私は大丈夫!!頸を!!頸を斬って!!」
こんなグズグズの腐った頸、斬れないはずがない!
しかし、童磨の頸が硬いのか、はたまた握力がなくなってきているのか、なかなか斬り落とせない。
伊「ぬぉおお!!」
「獣の呼吸 思いつきの…投げ裂きィイ!!」
伊之助の投げた二本の刀がカナヲの刀に噛み合い、刀を押し込む。
そして、グッとカナヲの刀を握るもう一つの手。
しのぶの手だ。
「うぉおおお!!!」
刀がぐぐっと更に押し込まれ…
ザンッ
頸が 斬れた。
ボロボロと崩れゆく童磨。
共に菩薩も崩れ去り、伊之助も投げ出された。
消えていく童磨の元にズルズルと疲弊した体を引きずり4人が並ぶ。
「とっととくたばれ 糞野郎。」
4人の声がそろった。