第43章 仇と執念
『骨まで残さず喰べてあげたよ!』
カ「いい加減にしろ!!下衆が!!」
「なんてひどい…」
し「……。」
しのぶは静かに筋を立てる。
「かわいいね、伊之助。
ちっちゃいおてて。
伊之助はあったかいねぇ。
私の宝物…
一緒にいられて幸せだねぇ。」
伊「本当に奇跡だぜ。
この巡り合わせは…
俺の母親を殺し、仲間をひどい目に合わせた鬼が…
目の前にいるなんてな!!!」
「謝意を述べるぜ。思い出させてくれたこと。
ただ頸を斬るだけじゃ足りねぇ。
テメェには地獄を見せてやる!!!」
伊之助の目には今まで見たことないほどの憤りが映し出されていた。
『地獄なんて人間の空想。
悪人は死後地獄に行くって、そうでも思わなきゃ精神の弱い人達はやってられないでしょ?』
『つくづく思う。人間って気の毒だよね。』
どこまでも人の神経を逆撫でする鬼だ。
伊「地獄がねぇなら俺がつくってやるァアア!!
俺の母親を不幸みたいに言うな、ボケェ!!」
——凍て曇——
——獣の呼吸 拾ノ牙 円転旋牙——
円を描くように二本の刀を振り回し、氷の煙幕を払っていく。
——花の呼吸…
伊之助に気を取られている童磨に仕掛けようとしたカナヲに気づき、カナヲの胴目掛けて扇が振られる。
泰葉はその背後に回り蹴りと拳を入れ、カナヲの攻撃を回避した。
——蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き——
童磨はしのぶの攻撃を寸前で躱し、天井の方へと跳んでいく。
『ごめんねぇ、猗窩座殿がやられちゃって時間もないから、君たちの相手はこの子にしてもらうよ。』
——結晶ノ御子——
氷でできた少し小さな童磨そっくりな人形。
シャリン…と降り立つと
——血鬼術 散り蓮華——
ぶわっと蓮華の花弁が舞う。
「何⁉︎」
驚いたのはその威力。分身といえど、童磨と互角だった。
そして、それがどれだけ厄介なことか…。
童磨は「あとは任せるね」と、どこかに行こうとしている。
そのまま行かせてしまえば、また誰かがこの厄介な鬼と戦うことになる。
せっかく、しのぶが毒を打ち込んでくれたのに。
あれから、30分程経つだろうか…。
まだ効かないのか…?
(もうそろそろ…)
童磨は扉の前でまた何体か人形を作り出している。