第43章 仇と執念
『君のお母さんのことはね、喰うつもりはなかったんだよ。
心の綺麗な人が傍にいると心地いいだろう?』
『君を抱いてよく歌っていたよ。
「ゆーびきーりげーんまん」って。そればっかり。』
伊之助の中で記憶が、ドクンドクンと蘇る。
伊之助は以前、しのぶの治療を受けた時に無茶をしないようにと約束をした。
その時「ゆびきりげんまん」と口ずさみ、伊之助は隊士になる前からしのぶに会ったことがあるのでは思っていたが…。
それはしのぶではなかった…。
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童磨は、寿命が尽きるまで手元に置いて喰べないつもりでいたが、伊之助の母 琴葉は感覚が鋭く、ある日信者を喰べているところに遭遇してしまった。
童磨が善行だと説明するが、琴葉は童磨を罵り、寺院を飛び出していった。
走りに走ったが、土地勘のない森の中。
どっちに行ったら良いか分からない。
崖まで追い詰められてしまった琴葉は
「もう逃げ場がない…
このままじゃ2人とも殺されてしまう。
せめて伊之助だけでも…。
ごめんね、伊之助。
ごめんねぇ…」
伊之助を崖の下の川へと落とした。
どうか助かり、生きられますようにと…
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