第43章 仇と執念
ドンッと飛び出した伊之助。
カ「そいつが撒き散らす冷気を吸わないで!!」
——獣の呼吸 肆ノ牙 切細裂き——
『アッハハ!めちゃくちゃな技だな!
刃こぼれした刀に変な太刀筋…それで成立してるんだから。』
伊之助の攻撃は躱され、素早く扇が振りかざされる。
しかし、鋭い皮膚感覚で察知し攻撃を避け、扇を蹴飛ばし距離を取る。
その体の柔らかさには童磨も驚いていた。
『君さ…』
童磨が口を開くと、伊之助の手には3本の刀。
二刀流の伊之助のものと、カナヲの刀だった。
伊之助は攻撃を避けながらカナヲの刀を取り返してくれていたのだ。
伊「これ、お前の?
カ「う…うん。」
伊「もう絶対取られんなよ。」
『速いね。気づかなかったよー。』
伊之助は大きく振りかぶる。
しかし、童磨の間合いの外側だ。
流石に遠すぎる…、
それでもぬんっと腕を振り下ろす。
「何…アレ。」
ビチッ
全然届いていない…ハズなのに。
童磨の両目一直線に斬撃が届いていた。
——獣の呼吸 玖ノ牙 伸・うねり裂き——
腕の関節…全部外してる?
この後どうするの?
チィッと舌打ちしながら、腕をぶんっとふると、ガチンガチンと関節が戻った。
伊「クソッ、新技はまだ精度がイマイチだぜ。
頸狙ったのにズレちまった。」
いや…え?いやいやいや…えぇっ⁉︎
泰葉とカナヲは正直引いていた。こんな関節が自由自在に外したり付けたりできる人間見たことがない。
これには童磨も笑っている。
し「伊之助くんらしい技ですね。」
しのぶもクスッと笑った。
…笑えることなの?
『随分永く生きているけど、君のような子は見たことがないよ。』
伊「ふんっ、そりゃぁそうだろうぜ。
この伊之助様、そこいらの有象無象とは訳が違うからな!」
そう話している間に猪の被り物が消え、伊之助の素顔が現れた。
『かなり年季が入ってるね。この猪の皮…』