第43章 仇と執念
(なるほど…目だな。この娘は目が特殊なんだねぇ。)
泰葉もカナヲも、動体視力がずば抜けて良い。
肩、視線、つま先、肘、膝を注意深く見ている。
(僅かな傾きで次の動作を予測。
小賢しい上に並の剣士ができることじゃない。
…ん?1人は剣士でもないな。)
とりあえず目を潰しとこ。
カナヲの目を斬るようにヒュンッと扇を振った。
——陸ノ型 渦桃——
童磨の攻撃を避けつつ、体を反転させて螺旋の軌道で斬り裂く。
『すごく鍛えられた体幹だね!バネみたい!』
——血鬼術 凍て曇——
氷の煙幕を発生させ、辺りを凍らせていく。
泰葉はカナヲの目を手で覆い、ダンッと飛び退いた。
「あいつは私たちの目を潰そうとしている。カナヲちゃんは目がとても良いから…。気をつけて!!」
童磨は『待て待てー』と追いかけっこをして遊んでいるように、血鬼術を畳み掛けてくる。なかなか攻撃の範囲も広く、泰葉も近づきたくても近づけない。
——血鬼術 蔓蓮華——
蓮を模した氷の蔓を四方八方に伸ばし、絡め取ろうとしてくる。
氷の蔓を泰葉は蹴りで砕く。先端には触れないよう細心の注意を、払いつつ攻撃を躱していく。
カナヲも刀で弾き、応戦する。
(本当にあの娘は何なんだ?刀もないのに血鬼術を躱せる人間なんて聞いたことない…)
『次行くよ!』
休む暇などなく攻撃がくる。
——寒烈の白姫——
氷の巫女の上体像が2体出現した。
その巫女がフゥゥと吐息を吹けば辺りはピシピシと凍っていく。
カナヲは何とかその範囲から逃れることができたが、水に落ち、その中を歩くのには体力を消耗された。
——冬ざれ氷柱——
「カナヲちゃん、上!!」
巨大な氷柱がカナヲの頭上に姿を現しドドドと降ってきた。
寸前で交わすことができたが、童磨との距離がどんどん離れていく。
『近づかなきゃ頸斬れないでしょう。』
すると、フッと童磨の姿が消えた。
「⁉︎」
消え…
グンッ
「!!!!」
タン…と姿を見せた時にはカナヲの手には刀は無く、泰葉の体は童磨に抱えられていた。
『ほらぁ、しっかり持ってないから取られちゃった。』
童磨はカナヲの刀を適当なところにさくっと刺す。
「…っ!私を捕まえてどうするつもり⁉︎」