第43章 仇と執念
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所戻って泰葉達は、苦戦を強いられていた。
童磨と向かい合い、一瞬の隙も許さない状況。
しかし、鬼の中で何が繋がるものがあるのか、ふと童磨の気が逸れた。
『あれぇ?猗窩座殿、もしかして死んじゃった?』
ニコニコしていたかと思うと、一気に悲しげな表情をする童磨。
猗窩座…それは間違いなく、あの日杏寿郎の命を奪おうとした鬼。
死んだということは…誰かが戦ったということ。
その人達は無事なのだろうか。
杏寿郎もその中にいたのではないだろうか…。
『死んでしまうなんて…
悲しい、1番の友人だったのに。』
うぅ…と若干胡散臭い泣き声を出しながらしくしくと涙を流している姿をみると、鬼でも涙は流れるのだなと思ってしまう。
「もういいから。」
カナヲの冷たい声が響く。
泰葉ももちろん同情する気はさらさらない。
カ「もう嘘ばかり吐かなくていいから。」
『何?』
童磨もこんなに可愛い女の子から、こんなに冷たい声で言われ戸惑ったのだろう。
カ「貴方の口から出る言葉は全部でまかせだって分かってる。
悲しくなんてないんでしょ?少しも。」
今まであまり話さなかったカナヲが、こんなにもつらつらと話しているのに泰葉は驚いた。
しかも、なかなか辛辣だ。
カ「貴方の顔色、全然変わってない。
1番の友人が死んだのに、顔から血の気が引いてない。
逆に頬が紅潮するわけでもない。」
『それは俺が鬼だからだよ』
鬼は常に瞳が潤っていて瞬きをしない。
しかし、人間と同じく血は巡っているので、顔色は変化する。
カ「貴方のこと気の毒だと死の間際にカナエさんが言っていた。
貴方、何も感じないんでしょ?」
「この世に生まれてきた人たちが当たり前に感じている喜び、悲しみ、怒り…体が震えるような感動を貴方は理解できないんでしょ?」