第43章 仇と執念
猗窩座の頸が落ちて崩れたはずなのに、再生を始めていた。
どこだ…どこを斬れば倒せる…⁉︎
——破壊殺・滅式——
!!!!
それは杏寿郎があの日、奥義で対抗した技だ。
そして、それが躱され鳩尾を貫かれそうになった。
炭治郎はその前に斬りかかろうとするが、刀を振りかざした時にスポッと抜けた。もう握力が残っていないのだ。
炭(うそだろ…!!)
炭治郎は思わず猗窩座の頬を拳で殴りつけた。
杏(滅式…!ならば俺も奥義を出すまで!!!)
ぎりっと杏寿郎が構えを取る。
炭「煉獄さん!まさか!!」
杏「奥義を出す!!!君と冨岡はその後を頼む!!!」
義「煉獄!」
炭治郎は杏寿郎なら大丈夫と信じつつ、またあの日のようになったらと不安に駆られた。
しかし、今はやるしかない。
最終目的は鬼舞辻無惨を倒すこと。
猗窩座といつまでも戦うわけにはいかないのだ。
杏「猗窩座!君のしたことは許されない!
しかし、罪深き君の心は、今俺たちが断ち切った!!!」
「生まれ変わり、幸多からんことを願う!!!!」
(師範の守る素流を血で濡らし、親父の遺言も守れなかった。
そうか、俺が一番殺したかったのは…)
——炎の呼吸 奥義…——
炭治郎はこの攻撃に巻き込まれないように、義勇にしがみつき飛び退いた。
するとその時、猗窩座の表情が柔らかくなったように見えた。
杏「!!!!」
(なんだ…?今、猗窩座が笑った…?)
炭治郎も飛び退きながら感じた。
感謝の匂い…。
すると
ドガガガッとけたたましい音と、衝撃が走るがそれは杏寿郎達にではなく、猗窩座自身に向けられていた。
杏寿郎は刀を下ろした。
目の前には自分の拳によりボロボロになった猗窩座の身体。
おそらく、自分の中で終わりを求めたのだろう。
しかし…無情にも再生されていく身体。
ペタペタとどこかに向かって歩いていたが、ふと立ち止まる。
膝をつき何かに縋るよう手を伸ばして。
ボコボコと、再生されていく。
このまま頸が戻るようなら、また斬らねばならない…
杏寿郎達は刀に手を添える。
しかし、ピタリと再生が止まった。
杏「…来世では…幸せになれ…」
杏寿郎の言葉が届いたか…。
まるで成仏するかのように、はらっと散っていった。