第43章 仇と執念
師範は広い土地と道場を持っていた。
以前、山賊から助けた老人から礼にと貰い受けたそう。
しかし、それが面白くなかった隣の剣術道場は素流道場に嫌がらせをしていた。
父の看病をしていた狛治にとっては、父よりも体も小さいし、恋雪の看病など少しも辛くなどなかった。
その甲斐あってか、16にもなると臥せることもなくなり普通に暮らせるようになっていた。
ある日、師範に呼ばれていくと
『この道場を継いで欲しい。
恋雪もお前のことが好きだと言っているし…』
と言われた。
「は?」と恋雪を見ると、頬を染めて俯いていた。
もしかしたら罪人だった自分がこの2人を守り、真っ当な道に戻れるのかもと思った。
父への報告も兼ねて墓参りに行き、日が暮れる前に道場に戻った時には
2人は
殺された。
慶蔵や、狛治とはやり合っても勝てないからと。
井戸に毒を仕込まれて、それを飲んだ2人は死んだ。
約束したのに。
病で臥せていた時、恋雪が狛治に花火を見に行ったらどうかと言った。
自分の看病で、息抜きもできないだろうと思っていたのだ。
「では、後で近くまで背負って見に行きましょうか。」
今年見れなくても、来年やその先で見ましょう。
当然のように未来の約束をしてくれた狛治が、恋雪の心を暖めた。
その言葉が嬉しかった。
だから狛治と夫婦になりたいのだと。
「誰よりも強くなって、一生貴女を守ります。」
大きな大輪が明るく咲く中、貴女に誓ったのに…。
その後、生き残りの門下生が剣術道場を襲撃。
67名を素手での頭部破壊、内臓破壊により殺害した。
あまりの荒唐無稽な内容にこの記録は30年程して作り話ということで廃棄された。
そして、全てがどうでも良くなった狛治は
鬼舞辻無惨によって鬼にされた…。
それからもう戦っても意味がないのに
百年以上も殺戮を繰り返す
何ともまぁ
惨めで
滑稽で
つまらない話だ。
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