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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第43章 仇と執念



それは、強くならなければ持って帰って来られないからだ。
親父に、薬を。
強くならなければ返り討ちにあっても勝てない。
強くならなければ奉行所に捕まって刑罰を喰らう。


・・・・・・

猗窩座は人間だった時、わずか11で犯罪を繰り返していた。

人間の頃の名を 狛治。

家族は父親しかおらず、その父は病弱だった。
父を助けるために薬が欲しかったが、金がものを言う世界。
働くはずの唯一の大人が病気で、11歳の狛治には大金を稼ぐ手段がなかった。
薬は高価なため、それを手に入れるには人の金をとってくるしか出来なかった。

どれだけ刑罰を受けようと、何と言われようと
父のために耐えてきた。
しかし、また捕まった時、それを苦にして父は首を括って死んでしまった。

この世界が憎くて堪らなかった。
何も悪くない父が…病気で貧乏人は生きてちゃいけないと言われているようで。

狛治は自暴自棄になった。
ある日大人7人に囲まれた時、狛治はその大人たちを素手で滅多打ちにした。
そしてその時、子どもが殺されそうだと聞きつけて助けに来た、道着を着た男に初めて負かされた。


その男の名は 慶蔵。
素流という武術の道場をやっていて、門下生が1人もいないから入れという。
そして、同時に娘の看病を頼まれた。
聞けば慶蔵の妻は看病疲れで、先日入水自殺をしたと言った。

『本当に俺が不甲斐ないせいで妻にも娘にも苦労をかける。』
彼は自分のせいにしていた。

娘1人の家に罪人の俺を置いていいのかと聞けば、屈託のない笑顔で
『罪人のお前は先刻ボコボコにして、やっつけたから大丈夫だ。』
と言った。


娘だと紹介されたのは恋雪という少女。
けほけほと咳をする可愛らしい少女が、自分の父が咳をする姿と重なった。


病で苦しんでいる人間はなぜ謝るのか。
自分が一番苦しいだろうに。




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