第43章 仇と執念
炭治郎には見えた。
透き通る世界。
不思議と時間がゆっくり進む。
いや、動きがゆっくりに見えているのか…。
—-盛炎のうねり!!!—-
—-凪!!!—-
2人は猗窩座の攻撃を防ごうと技を繰り出す。
しかし、全ては防ぎきれなかった。何しろ、ほぼ同時に百発もの乱れ打ちが来たのだ。
「ぐあ…!!!」
「ごふっ…!!!」
2人は数発喰らってしまい、膝をついた。
『大したものだ。生きているとは流石だな。
致命傷は何とか躱せたか。』
猗窩座は杏寿郎と義勇に喋りかける。
杏寿郎は胸ポケットに手を入れた。
取り出したのは赤い飴。
それを一粒口に入れた。
『飴を舐める余裕もあるか?それとも死ぬ前の最後の思い出か?』
杏「思い出か…。ふ、そうだな。
冨岡、君にも一つやろう。
猗窩座は…たべられないんだったな。残念だ。」
回復能力がある飴なのにな。
そんな秘密は黙っておく。
じんわり温かなものが体を巡る。
泰葉のおかげで作れた飴。
こんな時だが、泰葉を抱きしめたい。
無事でいてくれているだろうか…。
『飴などいらん。そんなもの、何の足しにもならんだろう。
お前たち、諦めて鬼になれ。
炭治郎のように死ぬことはない。』
その猗窩座の背後にゆらりと動く影。
その姿に杏寿郎と義勇は驚いた。
猗窩座が炭治郎の存在に気づいていないのだ。
この状況ならば猗窩座の頸を狙える。
杏「では聞こう。猗窩座はなぜ鬼になったんだ?」
猗窩座の気が炭治郎に向かないように杏寿郎は猗窩座に問いかけた。
杏「戦いたいとだけで、鬼になるような変わり者ではないだろう?」
『…おれは…』
猗窩座が口を開いた時、同時に炭治郎が叫ぶ。
炭「猗窩座ぁぁ!!今からお前の頸を斬る!!」