第43章 仇と執念
しのぶは先程の血鬼術を吸ってしまったため、細胞が壊死してきて息が続かくなってしまっていた。
血鬼術は字の通り、鬼の血で発動される。
童磨は凍てついた血を霧状にして扇で散布する。
よって呼吸すること自体、危険が伴う。
し(連撃で大量の毒を打ち込むしかない。)
——蟲の呼吸 蜻蛉の舞 複眼六角——
中央突きの周りに5角を描くように突撃を入れる。
ブシャッと童磨から血飛沫が飛んだ。
…しかし、それはしのぶも同じだった。
しのぶは気付かぬ間に斬られてしまったのだ。
『今まで会った柱の中で一番速いかも!
毒じゃなくて頸を切れたら良かったのにね。それだけ速かったら勝てたかも。』
『あー、でも無理か。
君小さいから…』
童磨の言葉がしのぶの中で渦巻かれる。
——なんで私の手はこんなに小さいのかなぁ…
なんでもっと身長が伸びなかったのかなぁ…
あとほんの少しでも体が大きかったら
鬼の頸を斬って倒せたのかなぁ…
手が足が長ければ長いだけ筋肉の量も多い訳だから有利なのに。
姉さんがあの時言おうとした言葉を私は知っている。
『多分しのぶはあの鬼に負ける。』
そう言おうとしてやめてくれたんだよね。
しのぶは涙を溜めてもう溢れてしまいそうになってきた。
—- しっかりしなさい。泣くことは許しません。
姉さん…?
—- 立ちなさい。
立てない。失血で…左の肺もざっくり斬られて息もできないの。
—- 関係ありません。立ちなさい。
どんな犠牲を払っても勝つ。
わたしとも、カナヲとも約束したんでしょう?
「しのぶさん!!!」
あぁ、泰葉さんの声もする。
貴女は私の光。
貴女を姉のように好きだった。
『あれー?
もう1人女の子が来たの!!後で鳴女ちゃんにお礼しておかなくちゃ!
君、あれだよね?鬼狩りじゃないのに此処に来た…
可哀想にね。殺されに来ちゃったの?』
『凝慘が大好きだった…確かに可愛いもんね』
童磨が泰葉にベラベラと話しかけている。