第42章 僕のものに
次第に凝慘はイライラと腹を立て始める。
『貴様ぁ!俺の女に、何をしてやがる!!』
泰葉の拳や蹴りを使って杏寿郎を痛めつけるが、一向に唇を離そうとしない。
凝慘はついに自ら攻撃を仕掛け始めた。
強く踏み込み、杏寿郎に飛びかかり牙を剥く。
杏寿郎はこの時を待っていた。
凝慘は泰葉への強い執着…。
女を自分の言いなりにしなければ満足しない。
それが、男に唇を塞がれて、思うように動かないとすれば自らが仕掛けてくるだろうと読んだのだ。
『お前さえいなければ!!!!』
「君に泰葉は渡さない…!!」
——血鬼術 凝鮫の牙(ぎょうこうのきば)——
——炎の呼吸 伍ノ型 炎虎——
凝慘からは墨をこぼしたかのような漆黒の水飛沫が上がる。
そして鋭い牙を持つサメが杏寿郎に襲いかかる。
杏寿郎は泰葉を後ろ手に庇い、炎虎を放つ。
炎のように燃え上がる虎が凝慘のサメに向かい打つ。
ドォォンと大きな音を響かせると、杏寿郎の炎虎の方が優勢だったようで、凝慘は少しよろけた。
杏寿郎が壱ノ型の構えをとる。
泰葉も身体を動かすと、血鬼術は解けたのか自分の意思で動く。
(良かった、動ける!!)
泰葉も構えをとり、それに気づいた杏寿郎が耳打ちする。
杏「次で頸を取る。凝慘の気を引いてくれ。」
泰葉は頷き杏寿郎の肩を借りて跳び上がった。
「貴方ような歪んだ性格の人、私大嫌い!」
そう言い放つと凝慘は泰葉を見上げた。
『なぜだ…!
君の美しい表情を引き出してあげようと…』
思い切り泰葉は下半身を捩る。
「それが…」
「気持ち悪いって言ってんでしょうがぁっ!!!」
『ぐぁぁぁ!!!』
見上げる凝慘の顔に回し蹴りを喰らわせた。
グルンと回る凝慘の頸。
そこにすかさず杏寿郎が仕掛けた。
——炎の呼吸 壱ノ型 不知火——-
真っ直ぐに伸びる炎の直線。
今まで以上に力強く大きな炎を上げた不知火は凝慘の頸を高く跳ね上げた。
『なぜ…この…美しさ…快楽が…分からない…』
杏「泰葉さんっ!!」
「杏寿郎さんっ!!」
最後まで狂気じみた言葉を残し、パラパラと姿を消して行く凝慘。
それを2人は抱き合いながら見つめた。