第5章 煉獄兄弟
すると、耳元で声がした。
「すまん、話を合わせてくれ。」
なんだか、この声を知っているような…
後ろの男性は、持っていたのか木刀を男の目寸前に振り落とす。
「何をしていた」という質問に
男はガタガタしながら、口を開く。
まぁ、嘘もいいとこ。
ほとほと呆れた。
こんな奴、懲らしめてもらったらいい。
私は後ろの男性の着物をキュッと握って、
全部嘘よ!とバラしてやる
「お婆さんの事を怒鳴って」
これは本当
「この子にも酷いことして」
熱を出した勇敢な少年に掴みかかったし
「私のお尻まで触ったのよ!」
これは、言わなくても良いかと思ったけど、触ったのも本当だし!
気持ち悪かったし!
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〜杏寿郎視点〜
呉服屋の寸法を終えて、身支度を整える。
「穢い手で触るな!!!」
千寿郎の声がした気がした。
店主に急いで挨拶をし、
店の奥から出る。
千寿郎の姿がない。
「この少年の方が、アンタなんかよりよっぽど男前よ!」
と向かいの店から声がする
そこに目を向けると
顔を真っ赤にして倒れる千寿郎。
そして千寿郎を抱きとめているのは
「泰葉…さん⁉︎」
どういうことかと思っていると
男は千寿郎の襟元を掴んだ。
ピキッ
おれは自分の額に筋が立つのが分かった。
すぐに泰葉さんの後ろに立ち、男を睨みつける。
状況は正直分からない。
ただ、この2人はコイツに怒っているのは間違いない。
「…俺とも遊んでくれるか?」
男はガタガタ震えている。
このくらいで震えているのに、楯突こうなんて笑わせてくれる。
俺は買ったばかりの木刀を男の目寸前に振り、何をしたのかを聞いた。
すると、男は「お婆さんが代金が足らないと言って…」と言っている。
とても事実とは思えない。
すると
泰葉さんは俺の着物をキュッと握り、
お婆さんにケチをつけて怒鳴り、千寿郎にも酷い事をして、さらには泰葉さんの尻を触ったと訴えている。
なに…?
ビキビキっと更に筋が立った。
コイツ…許すまじ…。