第41章 開戦
泰葉は密かに状況を確認する。
本当に屋敷には誰もおらず、耀哉、あまね、それと娘二人。
にちか と ひなき。
なぜ二人がここにいるのか…
他の3人はどうしているのか…
ーもし、爆破するならばこの娘達も一緒に…
…無惨を油断させるため?
流石に娘まで巻き込まないだろうと思わせるためか。
はっきりとは分からないが、自分たちもそれは同じ。
作戦の中には娘達は予想されていなかった。
もし、あの作戦が行われるとなれば、私は2人を助けなければ…
耀哉と鬼舞辻は意外にもまだ話している。
無「私には何の天罰も下っていない。何百何千という人間を殺しても私は許されている。この千年、神も仏も見たことがない。」
…とんだ思い違いだ。
そう思いながら泰葉はぎりっと唇を噛む。
耀「無惨、君の夢は何だい?
この千年間…君は一体…どんな夢を見ているのかな…。」
耀哉の声色は変わらない。
相手は鬼の始祖。
しかも自分の命を狙いに来ている。
それにも怯まないのは
相当な憎しみ、恨み、執念の塊と言えよう。
『ひとつとや 一夜明くれば
にぎやかで 賑やかで』
この状況に似合わぬ姉妹の愉しげな声。
紙風船で遊ぶ二人の姿は
まるでそこだけ世界が違う様だった。
鬼舞辻は奇妙な感覚に襲われていた。
あれほど目障りだった鬼殺隊の元凶を目の前にして憎しみが湧かない。
寧ろ奇妙な懐かしさ、安堵感…
気色が悪い…。
耀「当てようか。無惨。」
耀哉の声に引き戻される。
耀「君の心が私にはわかるよ。
君は永遠を夢見ている。
不滅を夢見ている。」
無「その通りだ。
そして、それは間も無く叶う。
禰󠄀豆子を手に入れさえすれば…。
この女の代わりに禰󠄀豆子を出せ。
大事な女なのだろう?」
その言葉に耀哉の口元が不敵に綻ぶ。
耀「君は…思い違いをしている。」
無「何だと?」
耀「私は永遠が何か…知っている。」
「永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり不滅なんだよ。
この千年間、鬼殺隊は無くならなかった。
可哀想な子供たちは大勢死んだが、決して無くならなかった。
その事実が、人の想いが不滅であることを証明している。」