第41章 開戦
・・・・・・・・
「放して!!」
ここはどこだ?
大きな旅館のような場所に連れてこられた。
しかしおかしいのはその造り。
沢山の部屋と廊下は上下左右めちゃくちゃに入り組んでいる。
泰葉は身を捩る。
しかし鬼の力に敵うわけもなく、後ろに手を掴まれて身動きが取れなかった。
「うるさい女は嫌われるぞ?
こんなにあの柱の男の匂いをぷんぷんさせて…
あいつを殺せば俺のものになるか?」
金崎…基、この鬼はそう言って泰葉の耳元をべろりと舐めた。
鬼などに感じるわけもなく、ザワザワと悪寒しかしない。
すると
ベンッ
琵琶の音…?
ベンッ
ベベンッ
すると、ダンっと床に叩きつけられ、床しか見えなくなる。
そして、今までいなかったはずのぞっと全身の毛が逆立つような嫌な気配…。
『凝慘(ぎょうざん)。その女か。』
圧のすごい声がする。凝慘と呼ばれた金崎は膝をつき頭(こうべ)を垂れる。
凝慘…
これが金崎侑を捨て鬼と化した鬼の名なのだろう。
泰葉は凝慘に抑えられ、床に平伏せられた。
「はい、無惨様。
この女が西ノ宮泰葉でございます。」
泰葉は目を見開く。
無惨…
今目の前にいる男こそ鬼の始祖
鬼舞辻無惨…
『西ノ宮泰葉。
お前はなぜ鬼殺隊に護られている。』
鬼舞辻は思考を読むことができるかもしれない。
直感的に頭に侵入する何かを感じる。
泰葉は咄嗟に頭の中を無にする様にした。
『勘のいい奴だ。
まぁいい。お前は人質だ。
産屋敷の元へと共に行くぞ。』
凝慘に無惨と呼ばれた男は泰葉の髪をぐしゃっと鷲掴み、顔を上げさせた。
痛みで顔を顰める。
できる限りの睨みを効かせる。
『はっ、良い目だ。
貴様…只者ではないな?』