第39章 嫉妬 ❇︎
泰葉の膝がカクカクとし始める。
これを合図に杏寿郎は優しく寝かせてくれる…
だが、今日は違っていた。
グッと腰に左腕を回され引き寄せられる。
そして腰砕けになっている状態でもう一度立てと言っているようだった。
「きょ・・もう・・」
ハァ、ハァと息を切らし、立っていられないと訴えるも杏寿郎の目が冷たく見下ろす。
杏「俺は怒っている。
君の願いは聞き入れられない。
ほら、まだ大丈夫だろう?
…泰葉。」
耳元でいつもより低い声で囁かれればぞわりと全身が鳥肌たつ。
「あっ・・いや・・」
耳をすくめると、杏寿郎がニヤリと笑う。
杏「あぁ、君はここが弱かったな…。」
「だめっ、ひゃぁっ・・ん、はぁっ」
杏「言ったろう?願いを聞き入れられないと。」
そして杏寿郎はペロっとまた耳の額を舐める。
耳裏、時々耳の中に舌が入ると、甘い声が出るだけだった。
言っていることは冷たいが、でもやっぱり手つきが優しいのは杏寿郎が自分に愛を持ってくれているということを知らせていた。
すると杏寿郎は着物の帯に手をかける。
そして、少し強引だがぐるんと後ろの結び目を前に持って来た。
決してゆるく絞めたわけではない。
むしろこんなに器用に帯が回るとは思っていなかった。
杏「遊女の帯が何故前か、分かるか?」
泰葉は首を振る。
杏「聞いた話だが、男が買ってやった帯を見せるためと、一夜妻という意味もあるらしい。
そして、遊女だからな…。もちろん、男が解きやすいようにと前に結ばれているそうだ。」
そう言いながら、スル…スル…と帯を解いていく。
ゆっくり解かれていくのか何とも恥ずかしい。
「…杏寿郎さん、あとは自分でやりますから…「ダメだ。」
杏寿郎は泰葉を遮って、帯を解く。
バサッと帯が落ち、着物も脱がされる。
杏「流石に遊女ではないからな…普通の着物は工程が多いか…。」
襦袢姿になった泰葉は暗がりでも羞恥を覚えた。
「杏寿郎さん、恥ずかしい…」
泰葉はもう布団を敷きたかった。
そして布団を被り身を隠したい。
杏「もう恥ずかしいのか?まだ襦袢を着ているだろう。」
「…でも…」
杏「それに、これからもっと恥ずかしい姿になるんだから…」
また耳元で囁かれる。正気に戻ったらこれはやめてもらおう。