第2章 無限列車
走り出した列車の中、
泰葉はあまり人のいない車両を選んで、荷物を上に上げる。
すると、近くのお婆さんが荷物を上げるのに苦労している。
泰葉はお婆さんに話しかけた。
「お婆さん、私が上げても良いかしら?」
「あらあら、重いのよ?」
「ふふ、大丈夫。私力持ちだから。」
茶目っ気を含んだ笑顔を向けた。
…男の子達の賑やかな声が聞こえてきた。
「フハハ!スゲェ、スゲェぜ!主の腹ん中だ!」
「バカ、静かにしろよ!人に迷惑かけんな!」
「そうだぞ、伊之助。静かにするんだ!」
泰葉は目を丸くした。
赤みがかった髪の毛の市松模様の羽織の男の子と、髪も眉も羽織も黄色の男の子…に、嗜められているのは…
「い、イノシシ?」
「あらあら、長生きしてると二足歩行のイノシシも見れたのね。」
お婆さんは呑気な事を言っている。
何、何なの?
と、混乱していたが、彼らの服装が先程の青年と同じようだったことに気づいた。
彼らも青年の知り合いなのかも!と、ついて行こうと思ったが、お婆さんの荷物を上げている途中だった。
急いでお婆さんの荷物を上げる。
しかし、少年たちは先に進んでしまい、姿は無かった。
泰葉は少し肩を落として、お婆さんに向き直す。
お婆さんの荷物は確かに重かった。
「お婆さん、降りる時は誰かに下ろしてもらってね。
私がいれば、下ろすから。」
お婆さんは「ありがとう。」とにっこり頷いて、自分の席に座る。
泰葉も自分の席に座り、一息ついた。
きっと、この列車に乗っているのだから、もう少ししたら前の車両を探しに行こう。
そう思いながら、先程買った…いや、買ってもらった駅弁を食べることにした。
焼き魚はとてもおいしかった。
「美味しい」
泰葉は1人頬を綻ばせて弁当を食べた。
きっとあの少年たちも青年が買っていった弁当を食べているんだろうな、と勝手に思った。