第38章 新たな協力者
食事の用意が出来上がり、泰葉は杏寿郎に声をかけにいく。
「杏寿郎さん、昼食の用意が整いましたよ!」
杏「うむ!では、午前の稽古はここまでにしよう!皆、井戸や水道で手を洗ってから食べるように!
…わかったな、猪頭少年!」
伊「うぉ!流石ぎょろぎょろ目ん玉だぜ!見つかっちまった!」
こっそりおにぎりを取ろうとしていた伊之助がビクッと肩を震わせる。
炭「伊之助!ほら、手を洗うぞ!」
手招きしている炭治郎を伊之助は見据えたまま立ち固まっている。
早くおにぎりを食べたいだろうに、なぜ動かないのか…。
「伊之助くん、どうしたの?」
伊「…ねぇ。」
「ん?」
伊「手の洗い方なんてしらねぇ!!」
「…えぇ⁉︎」
今までどうしてきたのよ⁉︎
唖然としたが、彼も15歳。
これからの人生、手の洗い方も知らなければ恥をかいてしまうかもしれない。
「伊之助くん、手洗いの仕方を教えてあげるからおいで。」
泰葉は外履きを履いて井戸へと向かう。
伊之助においでと手招きをすると、素直について来た。
「さ、手を出して。まずは手を濡らします。」
手を出す伊之助に井戸の水をかける。
「それから、石鹸を手につけて両手を擦り合わせて、泡立てるよ。
泡がたったら手の甲を擦ります。…そうそう。反対側も同じ。」
伊之助と泰葉は至って真面目。
しかし、他の隊士たちは視線が釘付け。
その理由は、泰葉は実際に伊之助の手を取り、洗ってあげていたからだ。
泰葉の白い手が伊之助の手の中を滑る。
次第に指間に指を絡ませるように間を洗う。
親指もくるくると丁寧に洗われる様は、手を洗っているはずなのに、なぜか隊士たちには下心が顔を覗かせ、恥ずかしくなってしまった。
「さ、これで綺麗な水で泡がなくなるまで流す。
手ぬぐいで拭いたら…はい、綺麗になりました!」
泰葉にとっては子供に教えている気分だった。
伊之助はホワホワしている。
伊「…ありがとな。」
そう言って、おにぎりの元へと歩いて行った。
『あ、あの…僕も手の洗い方が…』
『おれも…』
「えぇっ⁉︎」
杏「ほぉ、では俺が洗ってやろうなぁ!」
『ひぇぇ!大丈夫です!できます!!』
便乗しようとした隊士は失敗に終わった。