第38章 新たな協力者
いつもより性急な展開に泰葉は「は、はふ…」とついて行くので精一杯だ。
なんせ杏寿郎をこんなに感じるのは久しぶり。
軽い口付けだけでも逆上せそうだった。
しかし、今は柱稽古の合間。いくらなんでも今に事が始まってはいけない。
まるで噛み付くかのように幾度も角度を変えながら口付けてくる杏寿郎をどうにか止めなくてはと、胸元をトントンと叩く。
だが、口付けに夢中になっている杏寿郎は少し苦しいと訴えているのだろうと思っていた。
なかなか止めてくれないので、また角度を変えようと少し唇が離れたところで泰葉は自分と杏寿郎の唇の間に手を滑り込ませた。
杏「んむ!」
まだ続きを…と思っていた杏寿郎は、驚いて目を見開く。
「は…杏寿郎さんっ、もう…これ以上は、だめ!
稽古の…合間でしょう?」
息を整えながら泰葉は杏寿郎を諭す。
むう…と不満そうに唸る。
杏寿郎は泰葉の手を口元から放させる。
杏「ずっとこうしたかったんだ…。
君に会えなくて、こんなにも寂しいものなのだと…。
触れたくて、声が聞きたくて、夢にまで見たぞ。」
まさか、事が起きてしまったとは口が裂けても言えなかったが、杏寿郎は泰葉に心の内を明かした。
そんな正直にしゅんとして言われれば、ついつい許してしまいそうになる。
「私も会いたかった…。
でも、今は大事な時でしょう?私はこれから一緒にいれるから。
今は少し我慢しよう?」
泰葉に言われれば、ついつい自分が甘えたことを言ったと自覚してくる。
だんだんと顔を赤く染め、片手で顔を隠し「不甲斐ない…」と呟いた。
でも、たしかに泰葉は帰ってきた。
ということは、稽古以外の時間は触れ合う事ができる!
杏寿郎は密かに心を躍らせた。
杏「うむ!では、今夜にでも存分に触れ合おう!
楽しみができたな!さて、稽古に戻る!!」
「えっ、今夜…なんて?」
杏寿郎の発言に目を白黒させながら聞き返すが、もうすでに杏寿郎の姿は無かった。
「今夜…。今夜…?」
今夜が泰葉の頭の中でループされた。