第5章 煉獄兄弟
街は沢山の人で賑わっている。
しかし、不自然に人だかりができていた。
金色の髪に毛先に映える緋色。
キリッとした太眉に
髪と同じく緋色と金色の瞳。
大きく力強く開かれた目。
背丈も高く
鍛えられていることが一眼でわかる。
道行く人は、二度見をして
女性は端正な顔立ちにうっとりとしてしまう。
煉獄兄弟は
それはそれは目立っていた。
「俳優さんかしら…」
「髪の色…異国の方?」
ちらほらと聞こえてくるが、兄弟は気にしていないようだった。
千「わぁ、しばらく来ない間にお店も増えていますね!」
杏「あぁ、歌舞伎を見たら、見てまわろう!」
2人は早速、歌舞伎の券を購入し、入っていった。
その日の席は満席となり、何故か女性が多かったのは彼らのおかげか否か…。
歌舞伎を堪能した2人は、街を歩き始める。
千寿郎はまだ幼さも残る12歳なため、
女性から声をかけられるのは、食べ物をもらうことが多い。
「かわいい坊やだね。ほら、この団子をお食べ。」
千寿郎はいつも、断るのに苦労する。
しかし、杏寿郎の場合は更に大変だ。
「ねぇ、私と甘味へ行かないかい?」
「何なら蕎麦屋に行ってもいいんだよ」
中には「うちの娘に会ってくれないか!」
と言ってくる者もいる。
今日もてんやわんやと人集り。
これを回避しないと歩けないのだ。
千寿郎はなんとか自分の人集りを回避できた。
(今日も兄上は大変だなぁ…)
杏寿郎は明朗快活とした性格なので流されることはないが、優しい人柄もあるため、一人一人にハッキリ断っていく。
今回はいつもよりも人数も多いので、時間がかかりそうだ。
眉を下げ千寿郎が視線を移すと、数軒先の蕎麦屋の前で、女性が絡まれているのが見えた。
助けに行かなくては!
…と思ったが、女性は手を振り切り
走って逃げていく。
追いかけようとする男に、隣の店の女将が怒鳴って行かせないようにしていた。
今回は大丈夫そうだな。
と、ほっと肩を下ろした。
千寿郎は同時にプリプリと怒った。
(女性にあんな乱暴な態度をとるなんて!)
杏「千寿郎、すまない!待たせたな!」
大きな声で声をかけられると、そのままの怒った顔で
千「兄上!行きましょう!」
と言ったので、杏寿郎は待たせたことを怒ってるのか?と思っていた。