第5章 煉獄兄弟
翌朝
チュンチュン
スズメが囀る。
杏寿郎は目を覚まし、ムクリと起き上がり、襖を少し開けた。
外はよく晴れているようだ。
陽の光が優しく入ってくる。
伸びをし、軽く体を動かすために中庭へと出た。
朝の運動用に壁に立てかけている木刀を持ち、素振りを行う。
今日は千寿郎と出かける予定だ。
汗をかく前にやめておく事にしよう。
杏「…99…100…」
ふう、と息をついてまた廊下から上がろうとした時、
槇寿郎の朝食を運ぶ千寿郎に会った。
千「あ!兄上、おはようございます!
朝食の用意はできていますが、召し上がられますか?」
杏「おはよう!
うむ!いただくとしよう!」
杏寿郎は千寿郎の持っていたお膳を、ひょいと受け取る。
杏「今日は俺が持っていこう。
朝食を食べたら早速出かけよう!
その旨を父上にも伝えてくる!」
千寿郎は、はい!と頷いて、自分たちの朝食の用意へと向かった。
杏寿郎は、槇寿郎の部屋の前にお膳をおき、街へと出かける事を伝える。
槇寿郎からは、相変わらず
「勝手にしろ」
と、だけ返ってきた。
いつかは、またみんなで歌舞伎を見に行きたいものだと、杏寿郎は居間へと戻った。
千「さぁ!兄上、食べましょう!」
食事中もソワソワと落ち着かない千寿郎。
何せ、街に行くのは久しぶりだ。
ましてや大好きな歌舞伎を見に行くのだから、楽しみで仕方がないのだろう。
杏「今日は、色々と見てまわりたいものもある。
歌舞伎を見たら、付き合ってくれるか?
もちろん千寿郎の行きたいところにも寄ろう!
考えておきなさい。」
千「…では、本屋にも行きたいです!
新しい本があるか見たいです!」
杏寿郎は頷いた。
食事と片付けも済ませ、槇寿郎の昼食は温めるだけにした。
身支度も整え、2人は早速街へと向かった。