第38章 新たな協力者
重い扉を開けると、そこには研究室のような光景が広がっている。
試験管や、フラスコ、顕微鏡などが並んでいる。
おそらく、機器は最先端の物だろう。
そして、真剣な眼差しで薬品の調合や、顕微鏡を覗く3人がこちらを向いた。
し「あら、泰葉さんいらしたのですね。
お呼び出ししてすみません。」
しのぶはにこりと笑った。
しかし、少し疲れているようにも感じる。
あ「こちらの女性が珠世様、こちらが愈史郎様です。」
あまねに紹介され、着物姿の美しい女性が頭を下げる。
しのぶも美人だが、珠世は大人の洗練された美しさだ。
ぽーっと見惚れていると、愈史郎と呼ばれた男がキッと泰葉を睨んだ。
愈「おい!いつまで珠世様を見ているんだ!お前のような醜女が見つめていい御方では無い!!」
「し、醜女⁉︎」
とんだ悪口。
そんなに堂々と言われたのは初めてだ。
珠「愈史郎!またそんな失礼な事を言っているのですか!」
愈「はい!すみません!本当のことを言ったまでです!!」
珠「愈史郎!!」
どこまでも失礼な男だ。
ちょっと苦手かも。
しかし、珠世を見る目が違うあたり、珠世のことが好きすぎて拗らせているようだ。
し「泰葉さんを醜女に見えるなんて…目が腐っているのでしょうか。」
ピキピキと筋を立てながら微笑んでいるしのぶは、愈史郎を毛嫌いしているのがヒシヒシと伝わった。
あ「こちらの方々と、泰葉様も協力いただきたいと思います。」
「はい、できる限りのことをさせていただきます。」
泰葉が頭を下げると、あまねも頭を下げ「ありがとうございます。」と礼の言葉を口にして部屋を後にした。
珠「愈史郎の失礼な態度、どうかお許しください。」
珠世が頭を下げるが、愈史郎本人は何に対して謝ることがあるのか…という顔をしている。
「いえ、大丈夫です。
申し遅れました。私は西ノ宮泰葉と申します。」
泰葉が丁寧に頭を下げると、珠世は眉間に皺を寄せた。
珠「西ノ宮…。」
珠世にも思い当たるところがあるのか…。
「何か…?」
珠「あの、血液などもですが、細胞も調べさせてください。」
「…細胞…?」