第37章 合同強化訓練
周りがうるさいのを放っておいて、泰葉は集中する。
天元と戦った時のように、目の前にいるのは実弥に化けた鬼だと思う。
自分の中でくつくつと湧き上がるものを感じる。
そしてギッと目を開くと黄色い光が瞳に灯る。
空気がガラッと変わり、実弥はゾクっとする。
実「へぇ、面白いじゃねぇかァ。」
シィィィ
(何?この音は…)
ー風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎー
「!!」
直線上に突風と共に斬撃が向かってくる。
泰葉は瞬時に身を躱し、なんとか攻撃を避けた。
呼吸を使うとは聞いていない!!!
しかし、風の呼吸のような遠距離でも通ずる攻撃には耐性を付けておきたいところ。
そのまま呼吸を使ってもらうことにした。
実「今のを避けられるたァ、いい反射だァ…!」
グッと木刀を持ち直す実弥。
ー風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐ー
実弥は大きく体を捻り斜め下から勢いをつけて斬り上げる。
グンと、周りの空気まで巻き込んでいくような威力だ。
泰葉は向かって右下から襲いくる攻撃を逆の左下から潜り込み、間合いに入る。
そして、実弥の右脇腹に打撃を入れようとするが、バシッと止められてしまう。そしてグルンと、回され地面に叩きつけられそうになる。
しかし、その力を利用し、実弥の開かれた足の間をくぐり背後に回った。しっかり泰葉の手を握ったままの実弥の腕を反対側の腕で掴み、そのままぐんっと引き上げる。
すると、前転するように実弥の体が回る。バシンっと打ち付けられる実弥だが、すぐに体勢を直した。
実弥はトンっと飛び上がる。
ー伍ノ型 木枯らし颪ー
実弥は大きく身を捻り、ぐんっと回転する。
すると、大きく風が巻き上がり竜巻のように唸り上がる。
広範囲の技。流石にこれは避けきれない。
「くっ…」
とにかくこの竜巻に巻き込まれてはいけない。
泰葉は後ろに跳び竜巻の外へと外れようとした…が、これは実弥自身の動きによって起こるもの。
なので、実弥の意思次第で移動する。
案の定構わず泰葉の方に向かってきた。
…これではやられる…!!
泰葉はその辺に隊士が置き去った木刀を見つけた。
素早く手に取り、風の中に入っていく。
竜巻ならば中心の方が…!