第37章 合同強化訓練
炭「どう…なったんだ…?」
辺りはシン…と静まり返る。
さーっと、砂煙がなくなっていくと少しずつ2人の姿を現していく。
竹と竹の間に2人向かい合っている。
互いに踏み込み、右腕を相手の顔目掛けて伸ばしている。
しかし、当たることはなく互いに頬を掠めただけだったようだ。
2人の左頬にピッと切り傷が入る。
結果は相殺…と言ったところか。
天「いやー、楽しかったぜ。
泰葉、これが本気か?」
「まさか!宇髄様をボコボコになんてできませんもの。」
天元ももちろん本気ではなかった。遊びでは笑えないレベルだったが。
泰葉の戦闘能力は本物だった。
天元はニヤリと笑う。
そして、親指で泰葉の頬の血をスッと拭い、ぺろっと舐めた。
天元の頬の傷は消えていく。
天「泰葉は俺じゃ治んねえんだもんなー。
ま、煉獄に治してもらえよ。」
そして、泰葉の肩を抱き、隊士達の方を向く。
天「お前ら、鬼の頸を斬れねえからって、馬鹿にすんなよ!!
悪口言いたい奴はこのくらい戦えるようになってから言え!!
よくも分からねえのに、人の悪口言うような奴は地味に不細工なんだよ!!」
例の女性隊士達は気まずそうな表情を浮かべていた。
泰葉は目を見開いて天元を見る。
天元は泰葉のためにみんなの前で戦わせたのだ。
いくら通達があったとはいえ、いきなり入ってきた一般人。
あの過酷な最終選別を受けていなければ、日輪刀も持たず鬼の頸を斬ることもできない。
それなのに、ボタンは違えど隊服を着て、しかも皆の憧れでもある柱に庇われている。
確かに他からすれば面白くない話だ。
でも、天元は泰葉が何もできない女だと思われ、馬鹿にされてるのは許せなかった。
それならば、引退したとはいえこの中では確実に1番強い天元が相手して、皆に見せつけてやろうと一肌脱いだのだ。
「宇髄様、ありがとうございます。」
潤んだ瞳で泰葉が礼を言う。
天元はつい頬を染めるが、平常心を装って泰葉の頭を撫でた。
天「いいってことよ。またなんかあったらいつでも言えよ。」
(あー、可愛い。煉獄のじゃなかったらなー)
そんな事を思ってるなんて、誰も知らない。