第36章 繋ぐべきもの ❇︎
義勇は錆兎という同じ歳の少年と一緒に最終選別を受けた。
宍色の髪の少年は、義勇と同じく鬼に身内を殺され、天涯孤独。
13歳だった2人はすぐに意気投合し、仲良くなった。
正義感が強く、心の優しい少年だった。
その年の最終選別で命を落としたのは、錆兎ひとりだけだった。
決して弱かったのではない。
彼一人で殆どの鬼を斬り伏せていたのだ。
義勇は最初に対峙した鬼に怪我を負わされ、その時も錆兎が助けてくれた。
錆兎は他の少年に義勇を託し、また助けを求める声の方へ駆けつけていった。
義勇が気が付いた時には最終選別が終わった後。
そして、錆兎の死を知った。
確かに7日間、生き延びてはいたが、自分の力で生き延びたわけではない。
義「鬼を一体も倒していない、助けられただけの人間が、果たして選別に残ったと言えるのだろうか。」
「俺は水柱になっていい人間じゃない。
そもそも、柱達と対等に肩を並べていい人間じゃない。俺は彼らとは違う。本来なら鬼殺隊に俺の居場所はない。」
その話を聞いて、目に涙が溜まる炭治郎。
しかし、不思議と泰葉の目には涙は出なかった。
義「柱に稽古をつけてもらえ。それが一番いい。
俺には痣は出ない。…錆兎なら出たかもしれないが。」
そして、義勇は「もう俺に構うな、時間の無駄だ。」と言い捨て、去ろうとする。
炭治郎と泰葉は、義勇は自分が死ねば良かったんだと思っていることを感じていた。
自分よりも生きていて欲しかった人が先に死んでしまったり、自分を庇って死んでしまったら、抉られるように辛い。
炭治郎も錆兎とは不思議な出会いをしていた。
最終選別に行くための鱗滝からの試練。それを突破するために稽古をつけてくれた。
死んでいるはずの彼が炭治郎を助けてくれた。
錆兎が生きていればすごい剣士になったことだろう。
炭治郎は今でさえ生きて元気にしているが、杏寿郎に命をかけて助けてもらった身。
あの時の心の傷は忘れることはない。
自分も確かに思った。
「俺が代わりに死んだら良かったのに」
しかし、信じると言われたからにはそれに応えるしかない。
どんなに惨めでも恥ずかしくても、生きていかなきゃならない。
どれだけ自分を叱咤して叩き上げてきたのか、どれだけ苦しい思いをしてきたのか。