第36章 繋ぐべきもの ❇︎
炭「ぎ、義勇さん!」
炭治郎の呼びかけにも止まろうとはしない義勇。
炭「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」
すると、義勇の中でパァンッと音がする。
その音は昔、錆兎が義勇の頬を叩いた時のものだった。
そして、ずっと黙っていた泰葉が口を開く。
「冨岡様、いつまで錆兎なら、錆兎だったらと言い続けるおつもりですか?」
炭「泰葉さん…それは…っ」
言っちゃダメだ、何も知らない奴らが…と言いた気な炭治郎。
それは泰葉も分かっていた。
しかし、誰かがはっきり言ってやらないとと思った。
「貴方は自分が死ねば良かったと思っているかもしれませんが、そんな事二度と考えないでください!
万が一、そんなことを言ったら私が殴ります!」
炭治郎は泰葉にギョッとする。
「以前お話ししてくださった、祝言の前日に殺されてしまったお姉様も、貴方に生きていて欲しいから庇って亡くなられた。
そして、錆兎様も貴方に生きていて欲しいから貴方を助けた。彼だって、本当は死ぬはずではなかったでしょう。でも、亡くなった方は戻らないのです!ならば、助けてもらった命、思いを貴方が繋がずして誰が繋ぐのです?託された未来を、貴方が繋ぐのです!
冨岡義勇!!」
義勇は昔錆兎に叩かれた頬の痛みを思い出していた。
義(痛い。錆兎にあの日言われたことと、同じだ…)
なぜあの日の錆兎とのやりとりを忘れていた…?
大事なことだろう。
思い出したくなかった。
涙が止まらなくなるから。
思い出すと悲しすぎて
何もできなくなるから。
蔦子姉さん。
錆兎…
未熟でごめん。
泰葉は義勇をふわりと抱き締めた。
義勇も泰葉に腕を回す。
義「すまない…姉さん。」
「私も大口を叩きました。何も知らない私が知ったように言ってごめんなさい。」
それに泰葉は知っていた。
義勇のことを柱達は認めているということを。
「貴方の努力はちゃんと皆さん分かっていますよ。
過去のことは知らなくても、貴方を柱だと思って疑う人は誰一人としていません。
鬼殺隊に居場所がないというなら、私はどうしましょう?隊服を着る資格もありません。貴方が自分を責めるなら、私はこの隊服を脱ぎますからね。」
義「悪かった。その隊服も似合っている。」