第36章 繋ぐべきもの ❇︎
そのまま朝食を済ませ、あとは出かけるだけとなった。
杏「泰葉さん、ちょっと良いか?」
杏寿郎が客間の前でちょいちょいと手招きする。
泰葉は小走りで客間に向かう。
中に入るよう促されて従うと、杏寿郎が泰葉を抱きしめる。
杏「まさか、泰葉さんが隊服を着るとは思わなかった。
しかし、これを着るということは、本当に明日の命が分からぬ身になる。柱稽古で命が危ないということはないが、十分気をつけてくれ。そして、何があったら必ず知らせてくれ。」
「うん、分かった。杏寿郎さんも気をつけてね。怪我した時はいつでも言って。頑張って早く帰って来るから。」
杏「そんなこと言ったら、早く会いたくてわざと怪我してしまいそうだな。」
杏寿郎はくつくつと笑う。
泰葉は頬を膨らませて杏寿郎を見る。
「それは話が違くなるわ!絶対そんなことしないでね!」
杏寿郎は泰葉の頬を両手で包み、そしてちゅっと口付けをする。
杏「あぁ、善処しよう。君こそ怪我をしたらすぐに言うんだぞ。」
そう言って杏寿郎と泰葉はしばらく口付けをして、別れを惜しんだ。