第36章 繋ぐべきもの ❇︎
杏「…ということがあってな。甘露寺が頼んでくれたそうだ。
勝手な事をして悪かった。」
杏寿郎は頭を下げる。
そんな風にされては怒るに怒れない。
「…恥ずかしいので、あまりお話しないでくださいね。」
とだけ、釘をさしておく。
「つけてみるので、あちらを向いていて下さい。」
今まで散々直接見ていたのだが…と思う杏寿郎だったが、泰葉に言われた通り後ろを向く。
杏「…どうだ?できたか?」
「できました…。」
杏寿郎が振り向くと、そこには胸元に可愛らしい布を纏った泰葉の姿。
大正でいう、乳バンド。今でいうブラジャーだ。
隠が特注で作ってくれているため、激しい動きをしてもズレることなく、しっかりと支えてくれる。押さえつける役割もしてくれているため、大きさも少し抑えてくれているようだ。
「とても、楽です。」
泰葉は感動しているようだ。
杏寿郎は、この姿にまた唆られてしまう。
キュッと纏められた泰葉の胸にはくっきりとした谷間。それに柔らかさを知っているため、今すぐ触りたい。
杏(…触れたい!しかし、喜んでいる彼女を俺の邪な気持ちで台無しにもさせたくない!)
杏寿郎は、額に筋を浮かべながら自制した。
杏「明日からの訓練にもつけていくといい!」
「はい!そうします!」
バサっ
その時、窓際に要がやってきた。
それはお館様から泰葉に宛てたものだった。
泰葉は中を開く。
すると、書かれていたものは
炭治郎と共に、水柱邸へと向かって欲しいとのこと。
理由は、大きな戦いの前に皆で一丸となって頑張りたいと思っているが、どうしても後ろ向きになってしまう義勇と話してくれないか…とのこと。
杏「うむ…。冨岡は自分を他とは違うと言って、1人になることが多い。彼のことだから、また言葉が足らないのだろうとは思うが、なぜそのように言っているのかは分からないんだ。」
柱合会議の時の光のない目。
泰葉もそれには気づいていた。
「でも…弟弟子の炭治郎くんはともかく、私で力になるのかしら。」
杏「なると思うから、お館様が頼んだのだろう。
冨岡の心を溶かしてやってくれ。」
杏寿郎は泰葉の頭を抱き寄せて撫でた。