第35章 誕生日 ❇︎
薄暗く、布団の敷かれた部屋の中、2人は立ったまま向かい合う。
杏「泰葉さん…」
「杏寿郎さん…」
互いに名前を呼び合うと、どちらからともなく口付けた、
「お誕生日、おめでとう。」
優しく、何度も触れ合う口付け。
リップ音が静かな部屋に響く。
そして、毎回息が続かなくなり、口を開いてしまうのは泰葉。
そこにすかさずヌルっと入ってくる杏寿郎の舌。
リップ音に加えて、唾液の水音も官能的で聴覚が刺激される。
路地裏でも散々口付けたのだが、またこの快感に溺れた。
「は…ん…んふ…」
「あぁ…ん…んん」
どちらの吐息も熱がこもり熱い。
互いに酸素を求め、口を離すと銀色の糸が紡がれる。
杏「大丈夫か…?」
杏寿郎が泰葉を確認すると、暗がりでもわかるほどに頬は蒸気し、身長差で必然的に上目遣いになる瞳は潤んでいる。そして唇はどちらのか分からない唾液で濡れて光っていた。
杏寿郎の寝巻きの袖をぎゅっと掴み、立っているのも容易ではなさそうだった。
そんな杏寿郎も顔を赤らめ、緋色の瞳はギラリと熱を孕み潤んでいる。
興奮からか息が荒くなる。
杏「泰葉さん…もう少しだけ…」
杏寿郎は泰葉の顎を掴みクイっと上げる。
そして、先ほどとは違い噛み付くように口付けた。
何度も角度を変え、泰葉の唇が取れてしまうのではないかと思うほど。でも、乱暴ではなくて泰葉には快感でしかなかった。
程なくして、泰葉の足がカタカタ震え出した。
もう立っていられないと崩れそうになった時、サッと杏寿郎は泰葉の身体を支える。
しかし、その時泰葉の足の間に杏寿郎の膝が入ってきて、秘部に太ももが当たった。
「ひぅっ!」
驚きと、刺激で何とも言えぬ声を上げる泰葉。
それを見て杏寿郎はニヤリと笑った。
左腕で泰葉の身体を支え、右手を泰葉の耳に持っていく。
そっと髪を耳にかけるとビクッと大きく跳ねる。
唇を離し、泰葉の顔を見ると、トロンとしながらもカタカタと震えていた。
俗に言う唆る顔である。
その表情にゾクリと杏寿郎は震えた。
杏「泰葉さんは…耳が弱いのか?」
杏寿郎がもう一度耳に触れると、その度にピクッと身体が跳ねる。