第35章 誕生日 ❇︎
「盛大にお祝いしましょう!
私も帰ったら手伝うわね!」
千「では!お願いがあります!!」
うーん…
し「泰葉さん、どうしたの?」
先ほどから考えてばかりいる泰葉にしのぶが声をかける。
「あ、しのぶさん…
それがね…」
泰葉はしのぶに今日が杏寿郎の誕生日だという事と、今朝のことを話した。
千寿郎に頼まれたのは、なるべく杏寿郎と遠回りをしてきて欲しい。とのこと。
しかし、遠回りといっても、何を口実にしていいのか分からない。
今日ばかり見たいものがあると店に向かったら不自然だ。
し「なるほど…。」
しのぶも一緒に考えてくれた。
そして、ハッと何かを思い出す。
し「ちょっと待ってて!」
診察室を飛び出したかと思うと、瞬く間に帰ってきた。
し「これ!これを使ってください!」
しのぶは縦長の紙を2枚持っている。
「これは?」
し「活動写真の券です!良かった!先日、薬草を譲ってもらっているお婆さんにいただいたの。
私は行かないから、誰かにあげようと思ってて。
ちょうどいいわ!」
活動写真は1時間もかからない。
これなら良い遠回りになりそうだ。
「ありがとう!助かったわ!」
そして、しのぶがもう一つ
小瓶を泰葉に手渡した。
し「これは…」
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杏「では、胡蝶!失礼する!」
「しのぶさん、お先に失礼します。
どうもありがとう!」
し「いえいえ、楽しんでくださいね。
良いお誕生日を。煉獄さん。」
仕事を終えて、蝶屋敷を出る。
杏寿郎は今夜は偶々非番だったため、着物で迎えにきた。
蝶屋敷を出た途端、手を繋いでくるから驚いた。
「蝶屋敷からみえてしまうわよ?」
杏「構わない!」
泰葉は照れながらも、くすっと笑った。
「あ!杏寿郎さん、この後少し時間あるかしら。」
杏「あぁ!まだ暗くなるまでに時間はあるぞ!
どこか寄りたいのか?
「しのぶさんから、活動写真の券をいただいたの!
どんなものかは分からないんだけど、観に行かない?」
自然に誘えただろうか…。
内心ドキドキと緊張していた。
杏「活動写真か!うむ!観てみたい!」
良かった、杏寿郎も興味を持っている。