第34章 黒い薔薇
炭治郎と玄弥の様子を確認して、泰葉はしのぶの元へと戻る。
すると、診察室の前に一輪の薔薇が置かれていた。
「…?こんなところに薔薇?
そして、黒い…珍しい薔薇ね。」
一般的には赤い薔薇をよく見かける。
最近は白い薔薇も出回るようになってきたが、黒い薔薇は初めてだった。
「しのぶさんにかしら?…痛っ!」
しのぶへの贈り物だったらと、薔薇に触れた時に棘が指に刺さってしまった。
指を見ると、痛んだ時にグッと動かしてしまった為、傷になり血が滲んだ。
泰葉はその指を口に当て、血を舐め取った。
「しのぶさん、失礼します。」
し「炭治郎くん達は…
泰葉さん、それは?」
しのぶは泰葉の手にある黒薔薇を見て眉間に皺を寄せた。
「今、戻ってきたらドアの前にあって。
誰が何のために置いたのかは分からないのだけど、しのぶさんに贈り物なのかな?って…」
し「だとしたら、私に相当な恨みでもあるのでしょうかね。」
「泰葉さん、黒薔薇の花言葉…ご存知ですか?」
泰葉は黒薔薇を見たのも初めて。
花言葉など聞いたこともない。
し「この薔薇にはいくつか花言葉が存在するの。
憎しみ、恨み、決して滅びることのない愛、永遠。
そして、あくまであなたは私のもの。」
しのぶの話を聞いて、泰葉の背中にゾワリと寒気がする。
し「これを本当に私の為に持ってきてくれたのなら、間違いなく憎しみ、恨みでしょうね。
ま、返り討ちにするけれど。」
そう言って机の上に一輪挿しを置き、そこに飾った。
し「花に罪はないわ。咲き誇れるうちは、心を癒してもらいましょう。
もし、また泰葉さんの前にこの花が置かれていたら、気をつけて下さいね。」
泰葉は静かに頷いた。